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看取り人は、抑揚のない声で答え、三白眼をきつく細める。
「僕をここに運んだのは君か?」
「はいっ救急隊にお願いして無理に。彼らは仕切りに病院に運ぼうとしましたが貴方がホスピスの入居者であることを伝え、所長から訪問医に救急隊を説得してもらって連れてきました。例外中の例外です」
看取り人は、抑揚のない声で淡々と告げる。
「何故?」
白髪の男は、息苦しげに聞く。
「何故?」
看取り人は、眉根を寄せて聞き返す。
「何故……わざわざ僕をここに連れ戻したのかな?僕はどっちみち死ぬ。どこで死のうと別に構わないじゃないか?」
「貴方こそ何を言ってるんですか?」
看取り人は、三白眼を歪める。
「貴方は……先輩を犯罪者にしたかもしれないんですよ?分かってるんですか?」
看取り人の言葉に白髪の男は眉根を寄せる。
看取り人は、小さく嘆息する。
「貴方がホスピス以外で死んだら……それは病死じゃありません。変死です。救急隊に運ばれるのは病院で、警察による調査と鑑識が入ります。そして……一番に疑われるのは先輩です」
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