想い出が始まる前に

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週末、市営のスポーツセンターに女性陣6名で向かった。わざと時間を見計らって到着した為、館内に入ると男性陣はすでに始めていた。一番奥のコートに見慣れた顔が幾つもある。パスを受ける瑶が目に映る。 「懐かしいなー。この音…」 想い出が甦る。胸の痛みと一緒に。 隠れる様にしてプレーを覗き込む。見た感じ、細かいルール無視で適当に入れ替わりながらの3×3をやっているみたいだ。翔也はベンチ。瑶はプレー中。行くなら今だ‼︎ 「翔也君。お疲れー」 「ヤバ。ホントにめっちゃ来てくれたね」 翔也が顔を近づけて小声で言う。 「大いに張り切ってくださいよ‼︎」 「うん。見てて‼︎」 タイミング良く…いや、悪く。交代で翔也が行ってしまった。あ、ヤバい。急いでみんなの所に戻ろうとしたけど遅かった。 「柳瀬」 腕を掴まれていた。 「あ、あぁ…」 「久しぶり」 「あ、うん。よ…柏木。元気そうでなにより」 「は?」 「あ、ちょっと呼ばれてるから、ね」 掴まれた腕を振り払って逃げた。 入れ違いに砂都ちゃんが瑶の所に行き話し始める。ああ、辛い。心臓が痛い。 「ナイッシュー」 懐かしい掛け声に振り返る。翔也が仲間とタッチして笑っている。みんな女性陣を意識してレッグスルー連発。狙い通りきゃーきゃーと騒がれて嬉しそうだ。また翔也がスリーポイントを決めた。高校の時から得意だったからね。変わらずキレイなフォーム。 「ナイッシュー」 思わず声を掛けると、翔也が手を上げて応えてくれた。
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