想い出が始まる前に

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「あ、あーはい」 作戦開始。無言の携帯を耳に当て慌てるフリをする。 「わかりました」 「どした?」 「翔也君、ごめん。ちょっと急用…」 「大丈夫?」 「急でごめんね。行くね?」 みんなが部屋に向かうタイミングを見計らって翔也にだけ伝える。 「そっか…。じゃ、またね」 「うん。またね」 手を振って翔也を見送る。よし、帰ろう‼︎ 後ろめたくて軽く小走りな私。 「おい」 あぁ、もうホント無理。 「どうした?」 「…え?ちょっと急用で」 「柳瀬」 「何?」 「…俺も一緒に帰る」 「は?」 「何線?」 「中央…」 「じゃあ一緒」 「…やっぱり南武線」 「は?」 「待ち合わせしてるから」 「何なの?お前さっきから」 「あんたさ…」 「何だよ」 「よく私に話しかけてこれるよね‼︎」 掴まれた腕を振り払う。 「は?」 「あんたなんかと二度と会いたくなかったのに‼︎」 ありったけの力を使って猛ダッシュする。追いかけて来るな‼︎絶対に来るな‼︎もう二度と会いたくない。
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