想い出が始まる前に

33/39

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
『ないわ…。マジで。柳瀬だけは絶対に有り得ない。ウザイんだよ』 「待て‼︎それが原因だっての?前後は聞いてなくて?」 「聞いてられるわけないじゃん‼︎」 瑶が頭を掻きながら私を見下ろす。その表情にセリフを付けるとしたら多分「マジかよ?」だ。 「卒業式近くにさ、備品盗難事件あったろ?」「…あった」 「伊藤から、柳瀬が備品転売に絡んでたって言われてたんだよ。あの時」 「はぁ?」 「だから、お前だけは絶対にやるわけないって言ったんだよ」 「『ウザイんだよ』は…」 「伊藤に言ったんだし」 「何だ…。何だ、そんな事…」 「…っざけんなよ。お前の聞き間違いで6年かよ?」 「…良かった。嫌われてたんじゃ、なかったんだ」 「バカじゃねぇの?」 涙が溢れない様に目頭を強く押さえつけた。 「帰るぞ」 そう言って瑶は少し前を歩き出した。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加