想い出が始まる前に

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「ここ」 「ん。じゃーな」 「え?」 「じゃあな。またな‼︎」 家の前まで来ると、瑶はそう言って来た道を戻って行った。 そしてあっという間に見えなくなった。 「あー焦った…」 ホッとした様な、少し残念な様な…何とも言えない感情になる。 部屋に戻り久しぶりにあの曲を聴いてみる。 楽しかった想い出が、また鮮やかに甦る。色んな場面の色んな笑顔が懐かしい。 「…戻りたい」 あの時、あの場に立ち止まっていたら、そのままずっと一緒にいられたはずなのに…。 取り戻せない6年に胸が痛んでやっぱり泣いた。 『家に着いたよ』 送ったLINEが既読になり、翔也が電話をかけてきた。出なかった。今、頭の中は瑶でいっぱいだった。
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