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第2話「突然の別れ」
食事を食べ終えると、母がケーキを切り分ける。
ケーキが配られた時、母が話し掛けてくる
「優太、これは私からのプレゼントよ」
母が身に着けている銀色のネックレスを取り外して、僕の首に付けてくれた。
てっきり鉄かプラチナ、シルバーだと思っていたが、まるでビニールみたいに柔らかいチューブ状のネックレスであった。
見た目は鉄っぽいのに、不思議な材質だ
誕生日ケーキは毎年食べるが、プレゼントは初めてだったので嬉しい
「母さん、ありがとう」
何故か母さんが涙ぐんでいる
ケーキを食べ終えると父親が真面目な顔をして僕に話始めた。
「優太」
いきなり真剣な表情をして、声色もいつもと明らかに違う。こんな父を見るのは初めてだ
「な、なに?父さん」
「驚くかも知れないが聞いてくれ。母さんと俺は籍を入れていないんだ。」
あまりにも急な発言に思考回路が追いつかない
「そして、母さんは明日から家を出て行く事になっている。」
な・・・・
「ごめんね優太」
母の少し茶色掛かった瞳が涙で潤み、頬を伝ってテーブルに零れ落ちる。
「えっ?何で?」
何から質問していいのかさえ分からない。
ただ「何で?」を繰り返した。
父の目からも涙が零れ落ちる
「ごめんな優太。ごめんな。」
何を聞いても二人とも謝るだけで理由を教えてくれない
いくら虐められても、どんなに嫌な事があっても泣かずに頑張ってきた。
僕の為に頑張っている両親に心配掛けさせたくないから我慢し続けた。
ただ、今回ばかりは涙を抑えられない。
「嫌だよ。これからも3人でいようよ。母さんは僕や父さんの事を嫌いになったの?」
涙が溢れて母の顔も見えない。
母が椅子から立ち上がり、僕の背中から包み込むように手を回す
母の顔が背中に当たる。
「ごめんね。私は優太も英雄さんの事も愛しているわ」
「僕が・・頑張って生活を楽にできる様に・・・頑張るから・・出て行かないで・・・お願いだよ・・・母さん」
涙で声が出づらいなか、必死に母へ僕の願いを伝えたが、母はうつむくだけで返事が無い。
うつむいている母が顔を上げた瞬間、僕の目の前が真っ暗になり意識を失った。
「あっ!」
いつ寝ていたのだろう?
僕は自分の部屋で目を覚ます。
急いでベッドから降りてキッチンに向かう。
夢であって欲しい・・・
しかし、そこには母の姿は無く、まるで母が家に居なかったかのように母の物は全て家から無くなっていた。
あれだけ泣いたのに、また涙が零れだす
まるで今まで涙を我慢していた分の涙が一気に流れ出したようだ
テーブルに一枚の紙が置いてある
「行ってきます」
父の短い手紙がテーブルに置かれていた。
「母さん・・・」
母の姿は羽鳥家から消えていた。
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