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「……凪咲、何してたの?」
不機嫌なオーラを身に纏った美琴が公民館の入り口で待ち構えていた。
「あ、いや、ちょっとね……」
「ふーん……何か香水の良い匂いがするね。浮気してたんだ?」
「へ?」
「良いよ、私一人で帰るから」
「ちょ、ちょっと待って美琴!違うの!」
それからの帰り道、美琴を必死に説得し続けた。その日は何とか許してもらえたが、それからしばらくの間、私は事ある毎に浮気女と呼ばれるようになってしまった。
美琴と食道の事で話をしたが、どうやら神様の肉の正体や食道の本当の目的については何も知らない様子だった。
私も、あれから食道について色々と考えてみた。まぁ、美琴が幸せなら他はどうでも良いという結論以外出せなかったけれど。
会食から三週間が経ち、私は今日も、私の家のリビングでくつろいでいる美琴の為にキッチンで夕飯の準備をしていた。
「私ね、今度”水道”っていうのを始めてみようと思うの」
「水道って、今、私の目の前にあるこれ?」
「いやいや、そっちじゃなくて…….って、あれ?なんかデジャヴ……」
「そういえば、食道はまだ続けてるの?」
「ん、あー……色々あってやめちゃった」
「へ?」
「いやだって、何気に毎日三食絶対食べるって難しくない?それに栄養バランスとか考えるのも面倒だし……」
飽きたんだね、私はその言葉をグッと飲み干した。
「それでね、今回の水道っていうのも、一部地域でしかやってないタイプのやつなの。今度一緒に行ってみようよ。ね?」
これからも、こういう事が何回もあるのだろうか。
正直気苦労は絶えないが、結局、美琴が幸せな道を歩んでくれるのなら、他の事はどうだって良いのだ。
「……うん、良いよ」
その障害になるものは、私が全部取り除いてあげれば良い。
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