みち

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「まもなく、三番線に電車が参ります。危ないですので黄色の点字ブロックまでお下がりください」 そんな放送も、私の耳には届かない。 毎日同じ電車が同じ時刻にこのホームへやってくる。 それに合わせて毎日同じ時間に家を出て、同じルートで駅へと向かうのだ。そして、同じ列車にため息をつきながら乗る。 引っ越してきて一ヶ月は、目新しいお店や病院なんかに視線を奪われながら歩いたものだ。暮らしになれた現在、慣れという退屈から逃れるためにイヤホンを両耳に突っ込んで我がもの顔で歩いている。 二曲、三曲聞いたところで、扉が開いた。到着だ。 この駅で降りてまた数分歩けば目的地であるバイト先。この駅に電車が止まる時、いつも考えてしまう。 旅行客が羨ましいな。私もこのまま電車に揺られてどこか遠くまで旅に行きたい。
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