BL、ときどき天文研究部（仮）

　思ったよりも素敵なマンションだったけれど、本当に駅から結構歩きました。希望は何を好き好んで、こんな所に一人暮らしをしてるのかねぇ。

　スマホの地図アプリで検索して来たけど、途中で何度か迷いそうになりましたよ。え？群馬って、スマホの電波届くのかって？流石に、そこまでの僻地じゃありません…。
　インターホンを押して、ドアが開くまでに少し時間がかかる。何か知らんけど、めちゃくちゃ緊張してきた。女子の部屋に入る時も、ここまではドキドキしなかったぞ…。いかん、平常心平常心！今日の訪問は、あくまで天文部としての活動なんだから。そう、崇高なる学究目的！そんな事を考えていると、やっと希望が玄関のドアが開けてくれた。
　「すみません、先輩。お待たせしました。ちょっと、風呂に入ってたもんですから…」
　うわああああああ、私服姿の希望だぁ！風呂上がりなので簡素な部屋着だけど、めっちゃ可愛い。ってか、めっちゃくちゃいい匂いする。何で、この時間帯から風呂入ってるの？準備？事前準備のためなの？明らかに、誘ってるよね？
　「先輩も、汗かいたでしょう？本当、駅から遠くてすみません…。良かったら、風呂にどうぞ」
　しかも、俺まで風呂に入れってか！？そうだよね。汚い身体のままだと、嫌だもんね。むしろ今から、いっぱい汗かくような気がするけどね。俺、一通り終わった後は希望と一緒にお風呂入るんだ…。
　とか考えてたら、そのままバスルームに通された。ついさっきまで希望が入ってた風呂だと思ったら、更に興奮してきたな…。いかん、マジで平常心だ！どうでもいいけど、洗濯機横に置いていた柔軟剤を含めてシャンプーもボディソープも予想通りのメーカーだった。たまに、自分の才能（？）が怖くなるな…。
　風呂に入って、用意してきた部屋着に着替える。ちなみにパンツ（下着の方）は、ちょっとだけ勝負的なのを持ってきました…。希望って、こういう所に気を使わなそうだよね。まぁそれはそれで、飾らない性格も魅力なんだ。え？ゴムとローションは、ちゃんと用意してきたのかって？みなさんのご想像に、お任せします…。
　「準備が出来ましたね、先輩。それじゃ…。一緒に、寝ましょう」

　！？！？！？！？！？

　い、一緒に寝ましょうって！？言ったよね、今？寝るってつまり、そう言う寝るだよね？希望くん、朴訥そうな顔して意外と大胆な…。
　誘われるがまま、希望の部屋（一人暮らしなんだから、寝室って言うべきなのか？）に入る。ベッドと学習机以外には、星座の本と地球儀の星座版（名前何ていうの？）と天体望遠鏡くらいしか見当たらない。何だか、いかにも希望って感じの部屋だなぁ。だけどロフトとかもあるし、男子高校生の一人暮らしにしては、なかなか贅沢な部屋ですね。流石は、こう見えても社長のご令息とでも言いましょうか。
　そうして俺たちは混ざり合い、組んずほぐれつしながら一つの存在となった…。訳じゃないのは、みなさんも察しがついてますよね。実際には、希望が上で俺が下になって寝ました。より正確に言うと、希望がベッドで俺が床に敷いた布団の上です。流星群を見るのは深夜なので、今のうちに睡眠を取っておこうって事らしい。うん。正直、予想がついてました。
　「本当に良かったんですが？何なら、俺が下で寝ましたけど…」
　「いや。部屋に招待までされて、流石にそれは悪いよ。気にせずに、希望はベッドを使って（その代わり、ベッドで一緒に寝るときは俺が上だからね）」
　希望はこんな時でも、本当に相手を気遣う優しい子だなぁ。何だかんだでこの位置関係も、エ○゛ァのカ○ルくんとシ○ジくんみたいで悪くない気がしてきたぞ。こんな真っ昼間に「寝よう」って言ってすぐに寝られる訳もないし、せいぜい希望との会話を楽しもうか。いい雰囲気になれば、「俺も、そっちに行っていいかな…」みたいな展開になっちゃったり！？そんな事を考えていると。
　「それじゃ、俺は寝ますから。1、2、3。グゥ」
　…え？なに今の？何か言い出したと思ったら、スヤァって感じで寝息立て始めたぞ！？えっ、何その特技。の○゛太なの？の○゛太くんなの？あまりの早さにタヌキ寝入りかと訝しんだが、この寝顔はどう見ても演技でしているようには見えない。星座観測のために眠ってるんだから、邪魔しちゃ悪いしなぁ。
　しかしこの特技、天文部員ならみんな必修で身につけとかなきゃいけないの？しょっちゅう、深夜の星座観測とかあるんだろうしね。まったりした文化部の一つかと思いきや、割と恐ろしい部活だったな。そして希望、可愛い顔して恐ろしい子…！
　そしてこの状況、どうしようかな。俺も寝なきゃなんだろうけど、まったく眠れそうにないぞ。昨日は緊張してなかなか眠れなったんで、起きた時間も遅かったんだよなぁ。隣を見ると希望が無防備な寝顔を晒しているので、そう言う意味でも眠れそうにない。いかん、平常心！
　こんな時は、羊を数えて…。いや、羊では足りない！そう、素数！素数を数えて落ち着くんだ！そして、希望と一緒に俺も寝る！

　えーと、1…は違う。2、3、5、7、11…。