BL、ときどき天文研究部(仮)

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 …えーと、20391、20397…。まだ、全然眠れそうにない。これ、一体いつまで続くの…?  考えていると、希望のスマホからアラームの音([Alexandr○s]のワ○リドリだ)が鳴った。それと同時に、勢いよく希望が跳ね起きる。かなり熟睡してたと思うけど、めっちゃ寝起きいいですね。考えなしに、うっかり手を出さなくて良かった…。  「おはようございます、先輩。よく眠れました?これから流星群を見ますけど、その前に腹ごしらえしなきゃですよね。なんか作りますよ、俺。自炊始めて間もないんで、口に合えばいいんですけど…」  おぉ。なんか知らんが希望の動作が、めっちゃ機敏だぞ。受け答えもシャッキリしてて、なんか普段とは別人みたいだ。いつも不思議ちゃん一歩手前の天然だと思っていたけど、あれは星座観測で昼夜逆転の生活をしていたためか…?とりあえず、よく眠れたか眠れなかったかで言うと(お前のせいで)一睡も出来ませんでしたけどね。  って言うかそれよりも、希望の手料理だよ!自炊始めて間もないとか言ってた割には、けっこう手慣れた動作で作り始めたぞ。俺も、何か手伝った方がいいのかなぁ。だけど恥ずかしながら料理なんてした事ないんですよ俺。バスケットボールより重い物は、持った事がありません…。このまま、大人しく見守ってた方がいいのかな。この状況も、何だか新婚夫婦みたいで素敵だし。ってか、希望のエプロン姿可愛い♡  ってな訳で、お手製のしらす丼をご馳走になりました。何で、湘南でもないのにしらす丼なんでしょうね。余ってたのかな、しらす。いやまぁ、そんな事はどうだっていいです。要は、希望の手料理が食べられてめっちや嬉しかったし美味しかった。本人は謙遜してたけど、いいお嫁さんになるんじゃないですかね。いや、マジで。  それからいよいよ流星群見るってんで、マンションの屋上に出ました。管理会社のご子息なんで、屋上の鍵持ってるんですよね。実家より高くて星を見るのに適しているから、そのための一人暮らしらしいです…。家事とか、面倒な事の方が多いと思うけどね。知ってたけど、本当に天文バカ…。いやいや、天文が大好きな子なんだなぁ。  屋上の地面に毛布とか敷いて、ここで寝っ転がりながら観測するらしいですよ。冬場はもっと本格的な寝袋とか使うけど、今はこの程度で構わないらしい。そろそろ五月だし、今日は気温も高いしね。  「だけど、うっかり寝ちゃわないでくださいね。死ねますから♡」  おっと。希望くんが、可愛い顔して怖いことを言い出したぞ。うすうす感じてたけど、天文が絡むとキャラ変わるよねこの子…。  「あ。そんな事言ってる間に、すでに流れて見えましたよ。ほら、あそこです」  え、もう?一瞬すぎて、よく見えなかった。空のどの辺に出るとか、分かんないものかな。  「こと座流星群は、夜空のどこでも四方八方流れますから…。ほら、今度はあっちに。10時の方向です」  いや、だからそれはどこやねん!何とか目の端で見えはしたけど、本当に流れるのって一瞬だな。  「こ…こんなに一瞬だと、願い事とかしてる暇なくない?しかも、三回とか唱えないといけないんだっけ?無理無理!」  「流星痕が残ってたら、ワンチャンありじゃないですか。ってか先輩、流れ星に叶えてほしい願いなんてあったんですか?何だか、意外」  そ…そりゃまぁ。お前と付き合いたいとかお前と恋人になりたいとか、お前とセッ…。とか、色々ね。流石に本人を前にして言うことも出来ないので、適当に濁しておいた。  「お…俺だって、人並みに願い事くらいあるよ。それより、希望は?」  「俺ですか?俺の願い事は、もう叶っています…。天文部の活動を蘇らせて、誰かと星空を見ること。その相手が、三原先輩とは思ってませんでしたけど。ここまで力になってくれて、本当にありがとうございます」  「な…何だよ、改まって。それに、本当に俺は何もしてないから…。部員を集めたのは、伊勢嶋の力であってさ」  「それでも、ここまで来れたのは先輩のおかげです…。新学期、あなたに会えて本当に良かった」 dd598732-1def-4061-b5d4-888ba8eb964d  そう言って、にっこりと微笑んだ…。うぅ、本当にいい子やなぁ希望。知ってたけど。  俺、怪我して部活を引退した時は人生の終わりみたいに思ってたけど…。何もかも、終わりなんてものはないのかな。こうして今ここにいるための、運命の巡り合わせだと思えてきた。天文部の活動も、思っていたより楽しいし…。俺、ずっとこうして希望の力になってやりたい。  ってか、それよりも流星群だよ。さっきから、目の端でくらいしか見えてないんだよなぁ。希望に言われて、慌ててその方向は見るんだけど…。  「位置、ですかね。こっちからだと、良く見えますけど。もっと、俺の方に寄りますか?」  希望が言ってきた。そこは、「代わりましょうか」とかじゃないの?「寄りますか?」って…。そ、そりゃ出来るものなら寄りたいけどさぁ。ってか、むしろ密着したいけどさ。何これ、誘われてる訳?今までの部活動でも、こんな感じで男を誘ってた訳?考えてたより、恐ろしい部活だな天文部…。  と、とりあえずは折角そう言ってくれてるんだしもうちょい寄りましょうか。うぅ、ちょっと調子に乗りすぎたかな。ほら、希望の顔がこんなにも近い…。向こうも、今更意識しましたってな感じで照れ出したぞ。もうちょい早く、気づいてもらえませんかね。  ってな事を考えてたら、向こうの空に流星だ!早く、願い事しないと!えーと、希望と付き合いたい。希望と、恋人になりたい。希望と、セッ…。  必死で願い事をしていたら、ちょうど振り返った希望と顔が合って…。唇と唇を、重ね合わせねていた。そうはならんやろ、って?こうして今実際に、なっとるやろがい!  「ご…ごめんなさい」  「いえ…。やっぱ、近すぎましたかね。えへへ」  何だろう、このラッキースケベは。流れ星にした願い事の、何百分の一かは叶ったって所かな…。いつかそのうち、セッ…の部分も叶えて頂きたいです。  その後ですか?すっかり安心しきった俺は、そのまま熟睡しちゃったんですよね。屋上で、凍死しなかったのかって?ご安心下さい。希望が気を使って、よっこいしょってな感じで自室に運んでくれたらしいです。自分より二回りくらい大きな奴を運ぶのは、大変だったろうに…。本当、申し訳ない。だけど、天文部では日常茶飯事だったらしいですよ。つくづく、恐ろしい部活だな。  それより、日曜日の夕方まで寝てたのでそれ以上の進展は何も無かったんですよ。うぅ、次回に期待…。
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