BL、ときどき天文研究部(仮)

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 「…すみません…」  「…何で、君の方が謝んの。俺の方こそ」  改めて、目の前の…。目と鼻の先って言った方が、正しいかな。壁ドン相手を、観察する。本当に女の子みたいな顔、そして控えめな身長だなぁ…。俺自身が180cmあるから、余計にそう思うのかも知れないけど。これでも、バスケ部ではそこまで大きいって方でもなかったんだぜ。  シャンプーなのかボディソープなのか柔軟剤なのか、それともその全部なのか。何か知らんが、いい匂いも漂ってきたぞ。ペロッ。これはボ○ニストの、ボ○ニカルシャンプー&トリートメント…!なんて、言いませんよ。俺は、そんな変態さんじゃないんですから。  でもまるでBL小説に出てくる受けの、お手本みたいな子だ…。って、前の彼女なら評したかも。言ったっけ。直前の元カノが、いわゆる腐女子だったんだよ。年上の社会人で財力があって、見た目も悪くはなかった。だけどまぁ、付き合っていい思い出があったかって言われると…うん。まぁ…うん。  俺の人生、こんなんばっかだなぁ。高身長でバスケやってて、県内でも学力高めの高校に進学して。それこそ見た目も悪くないので、付き合う相手に不足する事もありませんでした。自慢かって?違いますよ。謙遜とか抜きで、色々と満ち足りない事が多かったんです。ちなみに、恋愛対象ですが…。  女ですよ。俺は、ストレートですので。まぁ今の高校を含め、男に告白された事も二度や三度ではないけど…。他人から見て、「羨ましがられる」存在ではあるのかなぁ。だけどね、常々思うんです。他人と比べて、ちょっとテストの点がいいとか悪いとか。はたまた、ちょっと身長が高いとか低いとか。そんな比較に、何の意味があるんだろうって…。  とりあえずは、目の前の現実(壁ドン相手)に話を戻しましょうか。無理な体勢を続けている俺を気遣ってか、「もっと楽にしてくれて、いいですよ?」だの「力抜いて下さい」だのと声をかけてくれている。気持ちは嬉しいし、実際に性格のいい子なんだろうけど…。逆に、シャレにならないからやめてほしいねん!何でちょっと、意味深な感じで言うんだよ。  ほら、遠巻きに眺めている女子高生二人がめっちゃ嬉しそうでしょ!?賭けてもいいが、あの二人は腐女子だな。元カノとの交際経験もあって、俺レベルになると匂いで分かる!どう見ても、スマホで俺らの事を撮影してるけど…。ねぇ、肖像権って知ってる?それ公開するのだけは、頼むからやめてね?  やっとのことで終点・高崎駅に到着して、この苦行からも解放された。これだから、朝の○毛線は嫌なんだよ!そもそも俺、朝練なくなったんしこんな早くに来る必要なかったんだ…。どうしても、今までの習慣が抜けなくて。満員電車はしょっちゅうだけど、下級生相手に壁ドンかましたのはこれが生まれて初めてだわ。  って、壁ドンで思い出した。例の壁ドンの子は、何かの朝練でもあったのかな。どう見ても、運動部員には見えなかったけど。なんて考えてたら、壁ドンの子が律儀に謝ってきたぞ…?君、まだ学校に向かってなかったんかい。そしてネクタイの色で今更気づいたが、俺より一学年下の二年生であったらしい。  「本当に、すみませんでした。三原先輩…」  「…俺の名前、知ってんの?君は、一体…」  「俺ですか?お、おおおお俺は名乗る程の者ではありませんから…。そ、それでは失礼しまっ」  あぁ。この子の一人称、「俺」なんだ。受け受けしい外見だから、平仮名で「ぼく」あたりだと思ってたわぁ…。って、イカン。この辺りの思考回路も、腐女子の元カノに毒されてるぞ。  バスケ部の試合で俺の姿を見たとか、きっとそんなんだろう。向こうがわざわざ「名乗る程の者でも」って言ってるんだし、深く関わり合いになる必要もあるまい。そう考えて、その場を去ろうとした所。  壁ドンの子が、特に段差も何もない所で盛大につまづいた。そのまま持っていた荷物の中身を、盛大にホーム一面にぶちまけた。おーっと、この子は…。いわゆる一つの、ドジっ子やな?
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