BL、ときどき天文研究部(仮)

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 みなさんこんにちは、三原裕人です。まだ、日付は変わってませんよ。同じ日の、放課後です。話の展開が遅くて、本当にすみませんね…。一応、時刻的には「こんばんは」が相応しいくらいにはなりました。  あの後、体育館の新入部員勧誘でも彼らを見ました。正直、そんなに見たい訳でもありませんでしたが…。っていうか俺、バスケ部を引退してなかったらここでも勧誘に参加させられてたんだよな。試合以外で人前に出るとか、マジで勘弁してほしい。  伊勢嶋は同好会の分際で、めっちゃ演説うまかったですよ。「BLは単なる娯楽に留まらず、もはや本格的な文芸の域に達している」とか何とか。意見に賛同するかどうかは置いておいて、全校生徒の前で主張出来る度胸は買った。何ていうか、場慣れしているんでしょうね。  対する、堀北は…うん。声が小さい上に、しどろもどろで何言ってるか分かりませんでした。これが、普通の反応なんでしょうけど。本当に、名前貸しで入部してあげてもいいかなぁ?ってか、たまに顔も出していいもかなぁ。なんかちょっと、可哀想になってきたしね。  そして、放課後になりましたが…。校門で、その堀北が待ってたんですよ。なんかこの俺に、伝えたい事があるからって。てっきり、入部のお願いかと思いきや…。むしろ逆に、無理はしないで下さいとか言いだした。いちおう俺が三年生だから、受験勉強で大変だと思われたみたいですね。  「そりゃ俺だって、有名人の三原先輩に入部してもらえたら鼻が高いですけど。でも、今がいちばん大切な時期でしょう?本当に、無理はしなくていいですから」  「あぁ。受験の事は、そんなに気遣わなくていいんだけど…。ってか、有名人ねぇ。俺って、そんなに有名?朝、伊勢嶋にも言われたけど。あいつの方が、よっぽど有名だとは思う」  「何、言ってるんですか。有名じゃないって思ってるの、先輩本人だけですよ。バスケ部ではレギュラーだったし、勉強も出来るし…。その上、彼女さんにも不足した事はないんですって?羨ましいなぁ、あやかりたいです」  例えお世辞で社交辞令だとしても、なんて腰の低い子だろう。本当に、いい子だな…。って、感心する所だったんだろう。だけど、何でだろう?何故かは分からないけど、カチンときた。彼女に不足した事がないって、裏を返せば長続きした試しがないんだよ。  「俺なんて…。昔から要領よくて、何でも出来るとか言われてきたけど。本当に得意な事なんて、何もないよ。何をやっても、せいぜい80点止まり。満点だったり、一位だった試しがない…」  「その80点も取れない俺からしたら、羨ましい限りですよぉ。この高校の天文部目当てで、無理して受験勉強して入学は出来ましたけど。未だに、授業に付いて行けないです。それに、スポーツも苦手。何やらせても、せいぜい60点…。いや、50点かなぁ?あはは。それに、人間の価値ってそれだけじゃないです。人付き合いだとか、色々とあるでしょう?」  そうだね!全くもって、君の言うとおりだね…。だけど俺は、何故かますますヘソを曲げていた。何でだろう。適当に、「そうだね」とか相槌打っとけばいいじゃない。今までも、そうやって周りに合わせて生きてきたじゃない。何で彼の言葉には、いちいち反発したくなるの…?  「…人付き合いは、どうせ苦手だよ。未だに同性で、友達らしい友達はいないしね。引退したら、バスケ部の連中とも疎遠。80点どころか、平均点も取れなくて悪かったね…」  やめとけって!堀北くんは別に、そんな事は一言も言ってないでしょう!?ほら、可哀想に。今にも泣きそうな顔をして、俺を見てるじゃん。俺、彼にこんな顔をさせたかった訳じゃないのに…。  「…先輩?ごめんなさい。俺、そんなつもりで言ってた訳じゃ…」  「お言葉に甘えて、入部の件は考えさせてもらうよ…。一旦、保留って事で。それじゃ」  そう言って、足早にその場を去ってしまった。後ろを振り返って、悲しそうな彼の顔を見るのが辛い。帰りの電車、どうせ同じ路線なんだから。一緒に帰って、ゆっくり話でもすれば良かったのにねぇ。  まぁ、でも…。帰りもまた壁ドンする破目になったら、気まずい事この上ないわな。
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