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「そんなもん入れたら予算超えるだろうが!」
「そこを何とかするのが職人の仕事だろうよ!」
机を叩く音がして栄助とタエ子の兄、勝の怒号が響き渡る。
店を閉めた後、奥の母屋部分で連日のように二人の怒鳴り合い、もとい話し合いは行われていた。
自分自身頑固だと思っていたが、勝もまた栄助に負けず劣らず頭が固い。
譲る譲らないで話が中々まとまらない。
謹慎中なのが不幸中の幸いだ。時間だけはある。
それに、栄助は勝のことを中々気に入っていた。
菓子職人としての技術もさることながら彼がしてくる提案はどれも斬新で面白い。
懇意にしているところではできないような栄助の無茶振りも文句を言いながらできるだけ実現しようとする。
喧嘩っ早いところがなければもっといいのに。
元々声が大きいのも相まってすぐに声を荒げる彼に、栄助もつい応戦してしまう。
「はい、一旦休憩してください。お腹すいてるとついイライラしますから。ほら、義彦もびっくりしていますよ」
そんな二人に臆することなくタエ子は握り飯と味噌汁を二人の前に差し出した。
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