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完全に行き詰まっていた。 寄席に上がる許可が出た途端、多くの寄席に呼ばれる。 体の許す限りやみくもに一席を打つ。が、打てば打つほどドツボにハマる。 噺をすればするほど、栄助自身が納得できない出来になる。 それでも。 見た目だけで寄ってくる客は途切れない。 実力と客の入りが反比例しているのだ。 「いいよな、男前は」 「中身がなくても満員御礼だもんな」 噺家たちから表立って批難されることも増える。 師匠は現状を知ってか知らずか、何も言わなかった。 ただ、寄席で会うと静かに栄助の噺を聞いているだけだ。 栄助が尋ねても決まって、自分で考えろ、というだけだった。 ※ 「おい、栄助」 「へぇ!」 寄席で久しぶりに師匠から声をかけられた栄助は、文字通り師匠の元へ飛んでいく。 指導がもらえると思っている栄助をよそに、師匠から出たのは、親子会のことだった。 「もうすぐなんだ。きちんと準備しろや」 それだけいうと煙管を咥えた師匠に火を持っていく。 「あの、師匠。話はそれだけで?」 「ん?そうだ。何かあったのかい?」 「……いえ」 言いたいことは山程ある。
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