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謹慎は寄席だけだったのは師匠の温情だった。 今日もまた、茶屋に呼ばれて一席を打ったあと、部屋で休んでいたときだった。 「栄さん、謹慎になったんだって?」 顔見知りになった店員の女が話しかけてくる。 「もう噂になってんのかい」 「当たり前でしょう。人気若手落語家、三光亭 栄助(さんこうてい えいすけ)の噂なんて一瞬で伝わるわよ」 笑みを浮かべながら話すこの女の名前はなんだったか。 栄助は思い出そうとしたが、結局面倒くさくなって考えるのをやめた。 「ねえ、生活厳しいならしばらくうちに来る?」 流し目で媚を売るような視線を投げつける。 そうだ、松栄(まつえ)だ。同じ「栄」の字が入っているのを嬉しそうに話していた女だ。 しなだれかかってくる松栄を煩わしそうに押しやる。一度枕を交わしただけなのに、恋人気取りの女がうっとうしい。 「遠慮しとくよ。これ以上面倒を起こしたら謹慎どころか破門されちまう」 「あら、残念」
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