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「ツラくなったらうちでご飯を食べて泊まってください。一本の糸を栄助さんの前に垂らすくらいはできますから」 「蜘蛛の糸かい。……どこぞの小説みたいに途中で千切れるんじゃねえか」 少し前に流行った芥川某の小説になぞらえるタエ子に栄助は笑う。 「安心してください。私はお釈迦様ではないので千切れたらまた垂らします」 「そりゃあ心強い」 適当に返事したつもりはなかったのだが、タエ子には伝わらなかったようだ。 栄助が勘弁してくれと言うまで何度も何度も、いつでも家に来るように言い続けたのだった。
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