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ふぅー、と煙管から煙を吐き出すと、庭を見ながら師匠は口を開いた。 「答えられねぇのか?前座の時は、いや、儂のところに来たときはすぐ答えられてたのにな」 沈黙が二人の間に落ちる。 師匠が煙草を吸い終わるまでの数分、静かな時が流れた。 「別に今の落語が悪いとは言わねぇ。そつなくこなすことができてらぁ。だが自分でもわかっているだろう? 時が来たらおめぇは真打に昇進する。そうしたら弟子もできる。その時にそんな薄っぺらい落語で指導できるんか」 淡々と語る師匠の言葉は栄助に聞こえてはいた。だが響いてはなかった。 師匠は残念そうにため息をついた。 「今の(わけ)ぇもんらしい、といえばらしいがな。だが……なぁ栄助。落語は……」 その先の言葉は師匠のため息と一緒に空に吸い込まれた。
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