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「ちゃんと知りもしないのに鳥を追いかけまわすような殿方に会う必要なんてないわ」
姫がため息をつきました。柔らかな下草に腰をおろすと子供のように足を投げ出します。
「ねえ、レイダ。そう思わない?」
姫の呼びかけにレイダは今度も黙礼を返しました。
無闇に主人と口を聞くことも、批判的な意見にうなずくこともレイダはしません。それは彼の嗜みであり、先祖代々王家に仕える家の者として当たり前のことでした。
「でもそうね。お父様もお疲れのようだし、条件を変えることにするわ」
マリー姫がからりとそう言った次の日、城の前には新しい御布令が出されました。
『伝説のイナヅマクサウサギを捕まえた者をマリー姫の伴侶とする』
それを受けて、城には連日、ウサギを抱えた男が殺到しましたが、そのどれもがイナヅマクサウサギではなく、当然、姫は誰とも会おうとはしませんでした。
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