迷って揺れて、辿りつく

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退職の交換条件は、“民間人捜査協力者”になる事だった。 そう、私、平木渚は警察官を辞めたのである。 警察の捜査活動の中で、当然のことながら市民、つまり民間人の協力が必要な場合が多々ある。 わかりやすいところで、犯人と思われる人物や、犯人がやって来るだろうと見込んだ場所を見張る為に場所を貸す事も、捜査協力のひとつだ。他にも、事件捜査に関わる業界の専門家に協力を仰ぐ際の名目としても使われる。 私が捜査協力者として要請されているのは、チームで仕事をしていた時の相棒、長田陽平を手伝って事件を分析する事である。それには、時間に自由の利く派遣社員は良さそうだ。 そう判断して、6年。 私は派遣社員の事務職として、データ入力や書類、伝票整理などを中心として働き、終業後や休みの日に、必要に応じて陽平からの指示に従った事件分析の仕事を手伝って来た。 ―あー、なんだかどうしていいかわかんないなぁ 心の中がもやもやしている。警察官だった頃は、毎日が必死だった記憶しかない。だが、今は時間を持て余す時もある。
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