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爽やかの確立
学園内に入ると、何だか異様に視線を感じる。やはり、庶民感が漏れ出てしまっているのだろうか。…ほぼ全員が顔見知りのようなこの状況で、見た事のない顔だから凝視されているだけだと思っておきたいところだが。
俺のクラスは1年S組。
さっき確認し、唯一の友人も同じクラスだということが判明したので少しばかり気は楽である。
友人に会うためにもそして何よりこの痛い視線から逃れるためにも、まずは自分の教室に入らなければ。
「あの、1ーSってどこですか?」
あ。
やばいしくじった。
だってしょうがないじゃん、この質問もう5回目なんだもん。外部から来た俺にはこの学園の構造など分からないんだ。だから俺、勇気を出して近くの生徒に聞くことにしました。
なのにこのザマだよどう思う。
4人一様に走り去っていった。え、俺そんな庶民感出てる?それとも酷い顔??…………いや待てそんなはずはない。中学時代はそれなりにモテてたし、自分でも顔はいい方だと自覚してる。
…………あぁ、で、なにをしくじったかっていうとね。あと一人聞いてそれでも逃げられたら諦めて彷徨おうかなんて考えながら駄目元で最後の生徒に声をかけたの。
目の前にいたの誰だと思う?
───ヤンキーだよ!!!!不良だよ!!!!!
こんなエリート校にも不良っているんだな、なんて呑気に考える。いや、成長過程で何かあったのかもしれないな。それにしてもグレちゃうなんてまぁ、色々悩みがあったんだろう。
「……3階だ」
「え?」
「だから、3階。…分かんねェなら着いてこれば」
「…!はははっ、ありがとう!」
拝啓不良くん。見た目で判断してごめんね。君はなんて心の優しい不良くんなんだ。その優しさが見た目とあまりにもアンマッチで思わず笑ってしまう。
不良くんの動きが止まって、もしかして地雷を踏み抜いてしまったのかと不安になりごめんと一言謝れば、あらまぁびっくり返ってきた言葉はなんと「うるせえ!!!」
…………俺泣いちゃう。
それから、会話が通じる常識人な不良くんから色々情報を聞き出した。
まず、不良くんこと俺を教室へたどり着けない窮地から救ってくれた彼の名前は鬼頭壱馬。鬼頭も俺と同じ1ーSらしく、編入早々友達(勝手に認定)ができたことに心底安堵した。
それから、鬼頭に俺が今日から世話になる外部編入生であることを伝えた。まあ一応、外部編入の枠って勉強で勝ち取った特別枠というか、そういうものだったので、鬼頭は「すげぇんだなお前」と褒めてくれた。
……やっぱり良い奴だな、お前。
改めて見ると、鬼頭は整った顔をしていた。目つきが悪くて誤解されやすそうだが、話してみたら全然普通だし怖がらずまともに顔を見ればイケメン。もしかしてコイツ相当モテてんじゃ?………………あ、忘れてた。
ここって男子校だったわ。
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