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中学までの間で十分すぎるくらいにはモテたし、女子に好かれる爽やか系なキャラを演じるのにもそろそろ疲れていたので共学に進まなくて正解だったかもしれない。本当の俺はというと、口も悪いし人の好き嫌い激しいし…爽やか要素なんかどこにもないもんな。
「オイ、着いたぞ」
俺がこれからの高校生活でのキャラ付けに関して自己解決を済ませている間に教室に着いたみたいだ。
「案内してくれてありがとな」
「…別に。困ってる奴がいたら助けるのが筋だろうが。……、それに」
「それに??」
言葉遣いはThe・ヤンキー!って感じなのに、言ってることは的を得てるどころか人間として出来上がってる。優しい。
不安だらけな初日にこんな立派な鬼頭と仲良くなれるなんて、俺の運も捨てたもんじゃないや。
鬼頭が何か言いたげに、でもなかなか出てこないらしく続く言葉を詰まらせた。
「…………ッ俺のコト怖がらずに話しかけてくる奴なんかほとんどいねェから、、俺も嬉しかったっつーか、…なんつーか、その、今のは忘れろ」
「…………っく、あはははっ!忘れられるわけないだろ!!」
なんだコイツ面白ぇ!!
ただの口下手ヤンキーくんじゃねえか!
何を言われるかと思えば、嬉しかっただなんてかわいすぎるだろお前。大型犬かなんかなの?
ちなみに臆せず喋りかけた強者みたいに言われてるけど、あん時は周りが見えてなくて声掛けたらヤンキー(鬼頭)だっただけだよ。言わないけど。
てかやべ。
中学時代からの名残りですんげぇ爽やか出ちゃうんだけど。笑い方とか、もう染み付いちゃってるって。
男子校で猫かぶってもなんも意味ねーぞ俺。
「わっ、笑うなよ……!」
「ごめんごめん。鬼頭があんまり面白いから、つい」
「なんも面白くねェだろ!?」
「俺、初日から不安だったけど、最初に友達になれたのが鬼頭でよかった」
「……友達、って、思ってくれてんのか」
「はは、当たり前でしょ」
「………………そうかよ。ダチなら、…壱馬でいい」
「! じゃあ、壱馬。改めてよろしくな!俺のことも伊織って呼んでくれ」
「…ウス」
……なんっっか、青春!!!!って感じ〜〜〜〜!!!!!(感動)
もう完璧懐いてくれてんじゃん。かわいいなマジで。お?
あの感じだと鬼頭──改め壱馬───には友達少なそうだしあんま他人と馴れ合ってそうにも見えないから、心を開いてもらえたってことでいいんだろう。
ここ最近で一番幸せだよ、俺。
あ、そこまで話して気づいたけど、俺らずっと教室の扉の前で喋ってました。
壱馬が「入んぞ」と言ってくれたので入ります。よかった。他の人たちが顔見知りだらけの教室にガラガラと音を立てて入っていくの、俺一人じゃ心細すぎたもん。
俺たちが教室に足を踏み入れた瞬間、教室内の空気が変わるのが手に取るようにわかった。瞬間、教室中の視線が全てドアに注がれる。
…………すごい視線を感じる。廊下を歩いてた時並に。
「お、おはよ〜……」
恐る恐る(漏れ出た爽やか風で)挨拶してみるも、誰からも返事は返ってこない。それどころか気づけば何人か倒れていた。え、リサイタルのときのジャイ〇ンみたいな感じなの?俺って。みんな顔真っ赤にしてるし、なになになに、ここの教室そんな暑い?俺には快適に感じるんだけど。
挨拶が返ってこなかったことにショックを受けつつ教室を見渡せば、倒れなかった生き残り(失礼)の奴らがコソコソと俺たち─というよりは俺一人─の方を見ながら会話をし出していた。
さすがに耐えられなかったので、壱馬に小声で話しかける。
「ね、この空気なに?」
「……あー、こうなるだろうとは思ってたしお前は気にすんな」
「は?」
思わず素が出てしまった。いや出ていいんですけど別に。こうなるだろうと思ってた……?壱馬も俺の事ジャ〇アンだと思ってたの、??
とりあえず諦めて席座るか。
「伊織〜〜〜〜っ!!!!」
「っお、わ、!」
背中に突然大きな衝撃に襲われる。
嵐が到来しました。
俺の編入のきっかけである友人くん、ついに登場です。
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