8521人が本棚に入れています
本棚に追加
新しい仕事
「ついに明日だね!えまなら問題ないだろうけど」
「どうかな。それより紹介本当にありがとう。助かった」
「いいってことよ。ちょうど人が足りないって聞いてたし」
ソファに腰かけ、飲みかけの既に熱を失った紅茶を手にしながらスピーカーにしたままのスマートフォンで大学時代からの友人である高橋華と久しぶりの会話を楽しんでいた。
しかし明日は華から紹介を受けた仕事の面接日だ。
そのせいかふとした瞬間に緊張感が襲うのだが華のお陰かすぐにそれは消えていく。
「えまのことは大学時代からしか知らないけど、責任感も強いし胸張って紹介できるよ」
そういってくれた華に思わず口端が上がるのがわかる。
実は二か月前に新卒で入社した会社を退職したのだ。
有名大学を卒業後、苦労することなく入った大手食品メーカーだったのだが、会社の不正を告発したことにより退職を余儀なくされた。
今でも自分は間違っていなかったと思っているのだが、同僚には
『こんなにいい会社、黙っていれば今泉レベルならすぐに出世できていい思いで来たのに』
と言われた。
自分でもそのように思うときはある。でも、後悔はしていない。
退職してからちょうどタイミングよく駅で会ったのが華だった。
華は大学卒業後、大手広告代理店へ勤務していた。大学時代の同じサークルの先輩がいい人材がいたら紹介してほしいと言っていたというのを私に教えてくれたのだ。
話はとんとん拍子で進み、明日いよいよ面接だった。
「でも、芸能事務所とか興味ないでしょ?」
最初のコメントを投稿しよう!