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「まぁ、興味があるかと言われればないかな。でも、面白そうだなとは思ってるよ」
「大手芸能事務所だからね、有名な芸能人と会えるかもよ」
「ふふ、勉強しておかなきゃ」
「そういうのに無関心だもんね。ま、だから紹介したんだけど。ていうか男にも興味なさそうじゃない?」
「そんなことないよ。いい人いたら紹介して」
「本当?!じゃあ今度合コン開くから絶対来てよね」
華と電話を終えるとソファに背を預け天井を見つめた。
「芸能事務所か」
私が明日面接に行く“新しい職場”になるかもしれないところは所謂大手芸能事務所アースだ。正直、芸能人には全く興味がない。
華が私にそこを紹介してくれたのもそれが理由らしい。
『優秀な人であることとと、芸能人に興味がない人、だって聞いてたからさ。ちょうどいいって思ったの』
何故なのかはわからないが、ドラマ含めテレビも一切見ないしアイドルも俳優も昔から興味がなかった。
ただ、一人だけ…―。
“覚えている”人ならいる。何故覚えているのか、それは自分の初恋の人だからだ。
『今泉さんの目、綺麗だなって思って』
あのミステリアスな雰囲気を醸し出しながら、じっと私の心中を覗くような思わず身震いをしそうになるほどの強い眼光を思い出し呟いた。
「宮沢亜希君、」
確か彼は今、国民的俳優となり映画にドラマに引っ張りだこだったはずだ。
高校二年生のころの淡い淡い恋心を思い出しながら私は瞼を閉じた。
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