甘い棘と誘い

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 夕飯を作り、お風呂を沸かして彼の帰宅を待つこの時間がとても幸せだった。 好きな人に好きだと言えて、一緒に過ごすことが出来る。 これほどまでに幸せなのことはないのだろう。  ソファの上でボーっとしていると眠気が襲ってくる。少し仮眠しようかと思い、ソファの上に体を預けていると直ぐに眠ってしまった。  目を覚ましたら亜希君の帰宅時間近くになっていた。 「まだかえってないよね」  まだ眠気は残っているものの、目を擦り立ち上がる。 と、ここで電話が鳴った。 「もしもし、亜希君?」  テーブルの上に無造作に置かれたスマートフォンの画面に亜希君の名前が表示された。 直ぐに電話に出ると、亜希君の声が受話器口から聞こえる。外にいるようで車の走る音がする。 「えま、眠そうな声してるけど寝てた?」 「ごめんなさい、ちょっと寝ちゃっていて」 「いいよ、起こしてごめん。それよりテレビ見た?」  テレビ?と聞き返して私は考えるより先にテレビのリモコンを手にしていた。テレビをつけると、ちょうどそこには夕方のワイドナショーが始まっていて何故か亜希君の顔が画面いっぱいに映し出されている。 「え…何これ、」 「覚えてないの?公にするって言ったじゃん」 「ええ、」  亜希君の映る映像にはテロップで“最愛の人は一般人”と映し出されている。 頭の中がパニックになってテレビに釘付けになった。
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