甘い棘と誘い

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『突然の発表には何かわけがあるのでしょうか?』 『そうですね、僕が公にしたかったという理由が一番です。隠していると堂々とできないので』 『それほど真剣交際ということでしょうか』 『そうです。真剣です』 『お相手はどのような方なのでしょうか』 『一般の人なので詳細は伏せますが、僕にとって特別で、何よりも失いたくない存在です』 『そ、それは…』 『僕の方が惚れているので』 恥ずかしげもなく、スラスラとまるでドラマの中のようなセリフに私はスマートフォンを手にしたまま固まっていた。 「何これ」 「見てくれた?」 「…あ、はい」 「公にするって言ったじゃん」 「亜希君…これって私のことですよね」 「他に誰がいるの」 「…嬉しい、」 「もう家に到着するから待ってて」  数分で彼は家に帰ってきた。 バクバクと心臓の音がずっと煩い。指先までジンジンして、体が震える。 公にするとは確かに言っていたが、まさかここまで大々的に発表するとは思ってはいなかった。 「ただいま、」 「亜希君っ…」 リビングのドアが開くと私は直ぐに彼の胸に飛び込んだ。 「本当にいいんですか?」 「いいに決まってるじゃん。事務所にも話してあるし大丈夫だよ」 亜希君の大きな男らしい胸の中で、興奮しながら言葉を紡いでいく。
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