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Side奏
「素敵だよねぇ。交際報道はショックだけど一途なアキにドキドキした」
「私も!益々応援したくなった」
「しかも一般の人なんでしょ?凄いよね」
「てっきり堀川莉々と付き合ってるのかと思った。だってキス写真出てたじゃん」
「そうそう。でもあれってちょうどドラマの時期だったからそれに合わせて事務所側がわざと週刊誌とかに流して視聴率につなげてるって噂だよ」
「あぁ、なるほどね。だからあんなに綺麗なアングルだったんだ。でも、一般人の女性とお付き合いっていいね、夢がある」
「そうだね」
たまたま駅前で女子大学生風の二人が亜希君の交際報道を見ての感想を話しながら歩いていた。
ネットを見ても、彼の交際報道については相当話題になっていたようだが、どれも肯定的な意見が多かった。
もちろんアキの交際報道にショックを受けている人もいるようだが、一途な一面を見せた彼の好感度は右肩上がりだ。
「良かったじゃん、亜希君」
キャップ帽子を深く被り、サングラスをかけたまま歩き出す。ちょうど亜希君のことを話していた女子大学生の二人を横目に、僕は歩き出した。
この間、亜希君に会ったことを思い出す。
相変わらず僕に敵意のある目を向けてくるが、以前よりも雰囲気が柔らかくなった今の彼の方が好きだ。
『ちゃんと付き合ったから。手出そうとなんかするなよ』
久しぶり、と言って近づいたら言われた言葉を思い出し意外と嫉妬深い亜希君の顔を思い浮かべると自然に笑みが零れる。
その隣にはきっと今泉さんがいる。
だから、僕から彼女に何かすることはない。
『どういうタイプの女性が好みなんですか?』
以前聞かれた言葉を思い出す。
思い浮かべるのは、今泉さんの顔だった。
だけど今泉さんが笑えるのもまた、“亜希君の隣で“なのだ。
甘い棘と誘い
END
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