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Sideえま
上手くいかない。恋をして、両想いになることが出来て、付き合うことになって。
それがゴールだと勘違いしていた。
でもここからがスタートだった。
私の視界には、広い天井とそして亜希君の苛立ちを隠しきれない顔がある。
『あれってアキじゃない?』
『本当だ…え、でもあの隣にいるのって彼女?』
『一般人と付き合ってるって言ってたよね。でも、噂だととっても美人なんでしょ?それにしては普通じゃない?』
前に亜希君とデートをしているときのこと。彼がちょうど飲み物を買いに私から離れたときに亜希君のことに気付いた女性たちのコソコソと会話する声が聞こえて思わず顔を背けていたことを思い出した。
それ以来、亜希君の隣にいても恥ずかしくないようにしようと化粧やファッションに気をつかい、ダイエットも頑張った。でも、それでも彼の隣にいると自信がなくなっていく。
今日こんなにも頑張ってお洒落をしていたのも亜希君と今度どこかへ出かけるときに恥ずかしくないように…と、練習していただけだった。
思っていることを言葉にしようと口を開こうとする。
「んん、」
でもその前に彼が強制的に私の口を塞いだ。
「ま…っ、て、」
思い切り顔を背けた。
亜希君の苦しそうな顔が私を見下ろす。
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