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「さ、入って。えっと、事情が事情だから社長がオッケーって言えばすぐ採用になるよ」
「しゃ、社長?…ですか?」
「あはは、大丈夫大丈夫。多分採用だろうから」
ドアをノックした瑛太さんの後に続くようにして応接間のような部屋に入った。
想像していた“予定”とは違う流れになっていたことで戸惑いはあった。
しかし、誰であろうと面接をすることには変わらない。
私は「失礼します」と腹部に力を入れ、声を出した。
「あら、こんにちは。初めまして、私小柳と言います。ここの会社の代表取締役社長をしています」
高級そうな褐色の一人掛けの椅子から腰を上げ、上品に笑う女性と目が合う。
彼女がこの事務所の社長らしい。
私もすぐに挨拶を返した。
年齢は幾つだろうか。見たところ四十代前半ほどだろうか。
はきはきした話し方と柔和に笑いながらも目の奥が笑っていない綺麗な女性と向き合ってそう思った。
「どうぞ、腰かけて」
小柳社長の言葉に従い私は木製のテーブルを挟み、彼女の正面に腰を下ろす。
「年齢は二十五歳?」
「はい、そうです」
彼女の手元には履歴書等はない。既にデータで送ってはあるのだが、だいたいのことは記憶しているようだ。
「徳田君の紹介っていうことだから優秀なのは間違いないとは思うんだけど、優秀だけじゃダメなのよね。実はあなたに今回担当してほしいのはスタッフ職じゃないの」
「…スタッフ職じゃない…とはどういうことでしょうか」
そう、と言うといつの間にかいなくなりいつの間にかまた現れた瑛太さんがお茶を私の目の前に置く。
ありがとうございます、と軽くお礼を言い小柳社長を見据える。
「事前に聞いていたのは雑用含めたスタッフ職だったと思うんだけど、実は違うのよ。今回頼みたいのはマネージャーなの」
「マネージャー?」
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