1 覚えてない

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「ンッ」  やたらと色気ある声を出して、寝返りを打つ水色の髪の若者。  癖の強いふわふわとした前髪の下を(のぞ)いてみても、残念なことに相手は男。  まさに絶句。 (昨夜(ゆうべ)何があった?)  口元に手を当てたまま、脳ミソだけはフル回転。  寝返りを打ったことでうつ()せになった、色白な青年の肩が俺の肩まで数センチ。 「ンーー…………」  もうじき起きそうなのか、青年の(うな)り声が音のない寝室へ響いた。 「起こすべきか?」  (ひたい)に手を当てながら独り(つぶや)く。  結婚式の二次会のあと。仲間内だけで三次会と、男四人でダーツバーへ行った。  ワンゲームごと、最下位のやつがイッキする。  記憶の最後に残ってるのは。 (やべぇ、ダーツの途中から記憶そのものがあやふやだ、俺)  最悪だった。  久々に集まれた懐かしい面々との再会。  結婚したのが、初めて付き合った元カノだったことも相俟(あいま)って、正直ヤケが回っていた。 「だからって、なんで」  寄りにもよって、野郎が寝てる。     しかも真っ裸で!  時間を一日巻き戻したい。  人生で、初めて本気で、そう思った。
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