6 不変の一変

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 慣れないことをしたせいか、出すモンを全て出し切っちまったせいなのか。  無駄にはやく目覚めた身体を起こし、シャワーを浴びた。  テーブルへ置かれた缶に口付ける。 (ぬるっ)  立ち上がり、冷蔵庫へと二缶仕舞った。 (にしても、マジで汚ねぇな。こんなムードもクソもない所で、つい数時間前まで俺は……)  家の中を見渡して、本や衣類で散らかりまくった、なんの変化もない光景が目に入る。  変わったのは一つだけ。  玄関から入って突き当たり。1LDKの一番窓際にある寝室で、いまも寝ている水色頭の(みだ)れた姿が頭を過ぎった。 (俺が抱いた……んだよな)  いまさらながら、冷めた頭で考えて、昨日買ったタバコを(くわ)える。  ソファへと腰を下ろし、ガラス張りのテーブルで、ライター片手に火を点けて、鼻から出て行く煙を眺める。 (なんでだろうな……)  昨夜あいつにも言った気はしたが、野郎との経験なんざねぇ癖に、俺は不思議と遊を抱けた。  ここで火照った顔したあいつを見た時。俺の中で、何かが動くのだけは自覚した。  冷めてると、もっと他人に興味を持てと、バカほど言われてきたこの俺が。 (抱きてぇって思っちまったら、そりゃ手は出るよな)  胡座(あぐら)をかいて、寝室へと目を向ける。  木でできた洒落(しゃれ)た仕切りがあるせいで、遊の姿は全く見えない。  それでもなぜか。そこにいると思うだけで、口元が緩む自分が笑けた。 (あいつの腰。マジで大丈夫だよな……?)
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