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話は済んだとみたのか、彼はスッと立ち上がった。そして恐らく、私が気づいていなかっただけで、そこが彼の定位置だったんだろうなと、思うくらい慣れた動きで、本棚から適当に本を抜き取り窓際に腰掛ける。
なんだか、私よりこの部屋を存分に使っている気がする。
その勝手気ままな姿を見ながら、私は考える。
かなり、真剣に考える。
うーん、
たしかに背は高いし、肩幅も男の人らしいし何より私よりも強そうだけど、まあ、口調も丁寧?だし、あ、でも、本をお読みになるってことは、勉強も好きそ..あ、あれ、先週買った少女雑誌だ...うーん、刀投げちゃうし、人も投げちゃうし、
うーん
「決めたわ、コウタロウさん」
「命を助けていただいた御恩もありますし、三橋ハナは、今日から貴方の妻になりますわ」
まぁ、細かいことはいいよね。
私と一緒になるって言ってくださってるのだから。
雑誌を読んだまま私の方をチラリとも見ない彼に、三つ指をついて深々と頭を下げる。
「39日前かラ、ソうだけど」
もう離縁してもいいかしら、と思うくらい実に気のない返事が返ってきた。
〈あとづけ怪異譚 「鬼の巻」終わり〉
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