0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「明日の晩飯は西京漬け切り落としを焼く。味噌汁はわかめとねぎ」
献立が決まるが、冷蔵庫検索のアラートが響いた。
「野菜庫に、ネギがないっ!!」
眠気が飛んで、私はちょっと悩んだ。
17時のタイムセールに、西京漬け切り落としを買うのは決定事項だが、
長ネギを、生鮮野菜売り場で買うかどうか。
黒皮のトートバックに、長ネギをぶっさして満員電車に乗る・・・・
長ネギを半分に曲げるか?
いや、バックがネギ臭くなるのは困る。
長ネギ購入問題で頭を悩ましていると、衝立の向こうから声がした。
「あのぉ、鑑定お願いできますか?」
その女性は、笑顔というより静かな微笑みを浮かべていた。
私は一瞬、戸惑いを感じたが、すぐに仕事モードに切り替えた。
「ああ、大丈夫ですよ。どうぞ」
最初に、目に入ったのは、小さめの籐のかごバックだった。
可愛らしい白い造花がついている。
緩やかな栗色の縦ロールの髪が、肩より長めの所で揺れている。
髪を押さえながら、彼女は優雅な所作で武骨なパイプ椅子に座った。
最初のコメントを投稿しよう!