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夢見る少女のように、過去のモテ期の記憶を、その幻想に今も浸っているのだ。
彼を示す<1の魔術師>は、手品師のカードでもある。
もし、甘言をもって、彼女にアプローチしてきたのなら、警戒すべきだろう・・
金目当てとか、詐欺とか、この男が、<魔術師>のカードが示すように
うさんくさい人間ならば。
今は、逆位置で出ていないから、単に高齢者に優しい、愛想のいい社交的な男性かもしれない。
「そうですね・・」
私は言いよどんだ。
彼女の夢を・・無理に壊すことをしなくても、いいのではないか。
彼女は、現実を見ることはない。
太古の少女の海を、ゆらゆらと漂っている。
現実の年齢だけが、海底に積もっていくだけ。
「おしゃべりをしていて楽しい、とても素敵な関係ですよねぇ。
その方と現状維持が、今の所、一番いいのではないですか?」
私の結論に、ジゼルの婆さんは、また小首をかしげて微笑み言った。
「ありがとうございます」
納得がいかない時に、小首をかしげるのは、彼女のボディランゲージなのだろう。
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