01 安藤恭太

2/10
前へ
/170ページ
次へ
「で、やっぱり男子校だったのが原因だろう」 「ん……いや、それ以上に僕の心の問題やったって」 「ああ、なるほど。その方が納得できるね。他の男子校出身者に失礼だから」 「くう」  そう。べつに6年間男子校に通っていたことが恋愛弱者である最たる原因ではない。確かに機会が少ないという点ではそうだろうが、それでも恋人がいるやつはたくさんいた。  一番の原因は、僕が諦めたこと——否、大学進学後の人生にすべてを賭けたことだ。 「原因が分かったところで勝敗は変わらんのとちゃう?」 「そうさ。でも言っただろう。反省をして次に活かすのが大事だって。君が女の子に見向きもされない原因さえ分かれば改善の余地がある」 「その言い方、あまりにもひどすぎんねん」 「まあそう怒りなさんな。カッカしすぎると女の子は逃げていく」 「……誰のせいやねん」  僕は、涼しい顔をしてそっぽを向く学を絞め殺したろうかと一瞬血迷う。 「とにかく、次の作戦だな」 「はあ、またですか」 「善は急げだよ、恭太くん。考えてもみな、君はいま大学四回生。しかも就職活動が無事に終わり、残る単位もあと二単位だけ。経済学部は卒業論文だってないんだろう? それに内定をもらっているのは大手商社。ほら、条件だけ見ればかなりのハイスペック男、優良物件! 顔と性格は置いておくとして」
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加