01 安藤恭太

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 会ったばかりだというのにリラックスして自然な会話ができる彼女と、ガチガチに緊張している僕。この時点で自分の恋愛偏差値の低さを露呈してしまっている。だめだ、これではよくない! 今までと同じルートを辿ってしまう!  脳内に現れた学が腕組みをしていた手をほどき、僕の額をツンと抑える。「いいかい、恭太くん。会話の主導権は女の子じゃなくて自分で握るんだ。それこそが最初のデートに必要な要素だ。ただし、あまり話すぎるのもよくない。相手の話を聞くときはしっかり目を見て聞く。分かったかい?」  え、えっと、会話の主導権は自分で握ること。でも喋り過ぎず、話を聞くときはしっかりと目を見て聞くこと。……て、要求が多過ぎやしませんか?  グッドラック! と吠えて、脳内学はどこぞの魔神かのようにぽわわんと消えていった。おい、ちょっと待ってくれ。言いたいことだけ言って僕を一人ぼっちにしないでくれええええ! 「あの、どうかしました……?」 「え、あ……!」  しまった。今の悲鳴、しっかりと口から漏れてしまっていたじゃないか!  くそう、初っ端からなんたる失態を……。  後悔してももう遅い。きっと彼女の目に僕は相当やばいやつに映っているだろう。  がっくりと肩を落として落ち込んでいると、あろうことか正面からはふふっと優しい笑い声が響いた。 「安藤くんって面白いんですね。私、京大生の知り合いってほとんどいないから新鮮で。なんだかパントマイムを見てる感じで、得した気分です」 「ま、まじで……?」 「はい」  くううう! なんていい子なんだ。僕は今日、とんでもなくいい子と出会ってしまったんじゃないだろうか? ああ、神様仏様学様。これまで地道に善行を積み重ねてきた効果がようやく現れ始めたんだな。
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