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基本的に明るい国道沿いを走るのだが、なぜかそこだけは裏道を通るようになった。
あれは9月半ばの、夜7時ごろだった。裏道沿いにあるマンションの前を通ったときのこと。そこはエントランスの作りがバリアフリーになっているので、通るたびに気になっていた。
一般的なマンションのエントランスは、ほぼすべてといっていいほど観音開きの重い手動式ドアを採用しているが、そのマンションはめずらしく自動開閉式だ。
自宅マンションは手動式で、開いているときはいいが、閉まっていると、手の代わりに車椅子で押し開けなければならない。ドアは内側にも外側にも開くのが幸いだが、車椅子にもドアにも負担がかかるし、ガラスに傷がついたり、割れるまではいかないまでも、ヒビが入ったりする恐れもある。以前、ヒンジが壊れたという理由で、管理人がドアの修理を依頼したことがあった。「きっと無理な開け方をしているせいに違いない」と申し訳なく思いながらも、ドアが直った今も同じことを繰り返している。そうせざるを得ないのだ。
さて、そのマンションの数メートル手前まで来たとき、自動ドアが開くのが見えた。入る人影はなかったので、だれか出てくるのだろうと、通りすがりに横目で見ると、だれもいない。「見間違いだったか」と思ったら、閉まった。やはり勝手に開いたのだ。まるで、なかへ入るように誘っているかのようにも思えた。
引き返してもう一度ドアの前を通ってみるが、開かない。何度も行ったり来たりを繰り返したが、ドアは口を閉じたままだ。もちろん、他にはだれもいない。それに、不快なくらい空気の動きがない。
ドアは、道路から3メートルほど奥まったところにある。オートバイや自動車などが通っても、ちょっとした音や振動では開かないように設計されているようだ。だとすると、何に反応したというのか。そんなことが、その後も何度か起きている。
裏道に曰くがあるのか、こちら側に問題があるのかはわからない。
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