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歩道の端に、胸元が大きく開いたカットソーと、太ももあたりでひらひらするスカートにピンヒールの若いお母さんが携帯で話をしながら、自分の足元にまとわりつく2才くらいの子供と一緒に立っている。
女の子は横じまのタイツの上に、お母さんと同じようなひらひらしたスカートをはいて、退屈そうにうつむきながら電話が終わるのを待っていた。
携帯を耳に当てて、笑いながら喋っているお母さんはなんとなく加藤さんに似ている。
お母さんが足を交差させると、女の子がその足元を離れて、道路に向かって歩き出した。
車道のアスファルトに小さい足をかけた途端に小さい靴が脱げて、女の子は膝から倒れそうになった。
あ、やばい、と希代子さんが思った時、向こうから車が迫ってきた。
希代子さんの手に女の子の温かい体が触れると同時に、急ブレーキ音がして、目の前に真っ赤なバンパーが迫ってきた。
周りにいくつもの人影が見える。
視界が暗くてよく分からないけれど、たくさんの人が周りを囲んだような気がした。
助かったのかなあ。
希代子さんはぼんやりと思った。
太陽のあたたかい光りがまぶたを通して伝わってくる。
希代子さんの視界は真っ赤になって、次の瞬間、地面に吸い込まれそうに体が重くなって、すべてが闇になった。
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