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別れてから、連絡は取っていない。やり直すつもりはない。でも…。
書くことを止めているとしたなら、純粋に順也の文章が好きだったことだけでも伝えたい。きっと、私にはそれが足りなかった。支えるということの意味を、いつの間にか履き違えていたんだ。
この目の前の少女のように、純粋に、あなたの文章に、物語りに魅かれたの。あなたにも、この先、違った十年を過ごして欲しい。今、素直にそう思えた。
彼女が叫んでくれた、その『好き』という感覚を私はよく知っている。
だけど、目の前の希望に満ちた少女に、今の私が名のることが、なんだか申し訳ないような気がして、私はただ少女に深々と一礼した。
いつか胸を張って私の名前をあなたに伝えられる日が来たら嬉しい。それも私の夢になるかもしれない。
少女に手を振ると、駅までの坂道を下りながら私はスマホを取り出した。
最近ではネットでも小説を書けるらしい。
ううん、書こうと思えば、伝えたいと思えばいくらでも方法はあるはず。
さあ、この先十年の自分に向けて、リスタートを。
新しい道を。
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