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光る道を、目を細めながら、踏んで、蹴って、進んでいく。不安も、苛立ちも、全てこの道に叩きつけて走る。ライはこの先にいる。絶対この先にいる。
交差点に出て、思い出す。そうだ、ここは、ライと初めて会った場所。最悪の想像が頭を駆け巡る。
にゃあ、と鳴き声がして心臓が震える。その方向を見ると、ライは三人の男子中学生に愛想を振りまいているところだった。
「ラ、ライ」
「あれ、お前んちの猫?」と声をかけられるが、僕はライの無事を確認するのに必死で何も言えない。そして、どこも怪我をしていないことを確認すると、
「ありがとう、ありがとう!」
俺はつい三人に抱きついてしまう。
「お前、そんなキャラだったっけ?」「俺はよく知らない」「3組の奴でしょ」「名前なんだっけ」という会話が聞こえて、やっと同じ中学の奴らだと気づく。
「あ……僕……」
「ともあれ、猫ちゃん無事で良かったな」
な、そうだな、とみんなが労ってくれる。僕はどんな顔をしていたのだろう。
僕に踏まれて光が消えた帰路を、ゆっくりと歩く。久しぶりに浴びた夕陽で、ライの短い毛がキラキラと光って綺麗だったことだけは、鮮明に覚えている。
どうして僕だけこんな目に、と思うこともある。だけど、ライに繋がった道なのだ。
もしゼロからやり直せたとしても、僕はこの道を選ぶ。
引き籠もっているあいだに、街は光る道ばかりになっていた。すべての道の先には、必ず何かが起こる。きっと後回しにしたツケはデカイ。
これから一歩ずつ、踏みしめていくしかないのだ、と思う。
「まずは登校だね。ライに優しくしてくれた人がいると思うと、ちょっと気が楽だな。初めての友だち作りイベント、あるかな? なあ、ライ」
ライの頭を撫でてやると、にゃああと呑気に笑ってくれた。
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