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俺達の過去
「えっ!?」
俺が元刑事だったことはラジオがばらしたからだろう。釣り人は驚きの声を上げていた。
「元刑事さんがペット探偵ですか?」
釣り人は痛い処を突いてきた。
「まぁ、色々ありまして……」
「聞くも涙、語るも涙ってとこですが、先ほどのこと聞かせてください」
言って良いものだか解らずに俺は戸惑っていたら、ラジオが上手くかわしてくれた。
「先ほどのこと?」
「ホラ、一番目の事件のことです。知り合いなんでしょ?」
俺も同じことを聞きたかったので幾度か頷いでみせた。
「そうですね。元刑事さんてことでしたら、良いでしょう」
釣り人は道具を仕舞い歩き始めた。どうやら事件現場まで行くらしい。
「これは東京の事件ですが、金曜日の黄昏時橋に隣接する交差点付近で自転車に乗っていた高校生がハンドルをキックされ倒された。一瞬の出来事に何が何だか判らず、ボーッとしていると今度は頭を蹴られたそうだ。犯人は犠牲者が乗っていた自転車で逃げ、近くにいた人が救急車を呼んでくれたそうだ」
俺は石井と向かった現場で感じたことをありのままに話した。
「通り魔だっていうから、何かで刺されたのかもと思ったけど違うのか? そう思った俺は首を傾げた。『これを埼玉の事件と結び付けるには無理がある。アッチではナイフ刺されているんだ』と石井は言った」
「石井って?」
釣り人が聞く。その質問にしまったと思った。
(又やっちまった)
俺は縮こまった。そんな俺を見てラジオが口を開いた。
「警視庁の刑事です。磐城に事件の真相を探るようにと依頼したのです。だから磐城は事件現場近くのペットレスキューをかって出たのです」
又ラジオに助けられた。俺は頭を下げた。
「だから、俺の話しを聞きたいって訳ですか?」
釣り人の質問に頷いた。
「やはりそうか? 俺は報道された内容からでは二つの事件に繋がりがないと判断した。
ラジオが見誤ったのではないかと疑った」
言ってからしまったと思った。石井だけじゃなく、ラジオの名前も口走ってしまったからだ。
「『ごめん。手間を掛けたな。今回のことは忘れてくれないか』俺は謝りながら橋の向こうに目をやった。『繋がりは橋のコッチとアッチで起きた事件だと言うことだけか?』
石井はそう言った後で考え込んでいた」
ラジオと言っしまったことで俺は自暴自棄になっていた。それでも続けることにした。
「『何かあるのかも知れない。少し調べてみてくれないか』それは石井からの本格的な捜査依頼だった。『勿論個人的な依頼だ。だから代金は……』石井はそう言った」
「現役の刑事が探偵に事件の依頼をしたとは。その代金は……の続きが気になる」
釣り人は笑っていた。
「『何言ってる。話したのは俺からだ。タダでいいに決まってる』俺は石井の声を遮って発言した。口をついて出た時しまったと思った。でも俺はそれで納得した。『そう言うことでよろしく。現役の刑事が探偵に仕事依頼したらやはりマズイだろう』と言った石井の言葉に頷いた」
「そりゃ、そうなりますね。でもお気の毒に……」
釣り人は俺を哀れんでいるみたいだ。
「だから暫くはペット探しでもして食い繋ぐしかないか? と思った。したらさっきのペットレスキューの仕事が舞い込んだ。俺は覚悟を決めた。ラジオの勘を信じてみようと思ったからだった」
「そのラジオって?」
「あっ、俺のことです」
ラジオは俺に目配せしながら俺との出逢いを語り出した。俺のせいで又ラジオに悲しい思いをさせてしまう。
「ラジオっていうのは無銭飲食の隠語です。磐城は俺が食い逃げの犯人じゃないって知ってて、いつまでもラジオって呼んでる」
ラジオの発言に肩を落とした俺にラジオはハグしてくれた。
「でも、めちゃくちゃ良い奴なんです」
ラジオは泣いていた。
「もしかしたらだけと、橋の向こう側の食堂に行ったことがあるか?」
「はい其処で食い逃げしたとしてオヤジさんに捕まりました」
「俺も其処には良く行ったから聞いている。スリに財布を取られて……」
「あっ、それ俺です」
どうやら釣り人はあの食堂のオヤジとは知り合いだったようだ。
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