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「あ、ローザ…」
家の間近で、ローザはピーターに出会った。
ピーターは、はにかみながら片手を上げた。
「ローザ…声の調子はどうだい?
良かったらこれ…」
ピーターは、ローザに蜂蜜の入った瓶を差し出した。
「ピーター…もしかして、今まで、ここに蜂蜜を差し入れてくれてたのはあなただったの?」
ピーターは、相変わらずはにかんだままで小さく頷いた。
「……でも、どうして?
あなたはこの町で唯一、私に歌をせがまなかった。
あなたは私のことが嫌いなんじゃなかったの?」
ピーターは大きく目を見開き、首を振った。
「ローザ、それは誤解だよ。
君は、いつも誰かのために歌を歌ってた。
だから、僕までが頼んだら、君が余計に疲れてしまうんじゃないかと思って、それで…」
「まぁ…そうだったの?
でも、どうして?
こんな声になってしまった私に、どうしてあなたはこんなに優しくしてくれるの?」
「どうしてって…君は声が変わっただけじゃないか。
中身は何も変わらないだろう?」
「ピーター……」
ローザは、自分の勘違いを深く恥じた。
そして、以前の美しい声を失っても、まるで変わらず優しく接してくれるピーターに胸を熱くした。
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