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その後、ローザとピーターが仲良くなるのに、時間はかからなかった。
だが、ローザの声は少しも良くはならず、そのことでローザはふさぎ込む日々が続いた。
どこにも出かけず、ローザは家でぼんやりと過ごすことが多くなった。
「ローザ、今日もひきこもりだったのかい?」
「ええ…」
「玄関にこれが置いてあったよ。」
そう言って、ピーターが差し出したのは、色鮮やかな花束だった。
「そう…」
ローザは関心なさそうに生返事を返した。
次の日には、真っ赤な林檎が…そして、また次の日には、クッキーが置いてあり、ローザの家の玄関先には、毎日、なにかしらの品物が置かれるようになっていた。
「誰がこんなことを…気味が悪いわ。」
「ローザ…本気でそんなこと言ってるのかい?
これは町の皆からの贈り物じゃないか。
皆、君を何とかして励まそうとしてるんだよ。」
「まさか…私はもうこんな声になってしまったのよ。
こんな私には用はないはずだわ。
それに、どうして今頃になって…」
「馬鹿だな…君はそんな風に思ってたのかい?
皆、君のことをすごく心配しているよ。
今まで何もしなかったのは、君の声がそんな風になってしまったのは自分達のせいじゃないかって悩んでたからだよ。
君が怒ってるんじゃないかって、皆、とても気にしてた…」
「そ、そんなこと…私の声がこんなになったのは風邪のせいだし、風邪は誰のせいでもないのに…」
ローザはまたも勘違いをしていたことに気付き、深く反省し、懺悔した。
その次の日の朝、奇蹟が起こった。
ローザの声が、以前の美しく澄み切ったものに戻っていたのだ。
(ありがとう、神様…!)
ローザは今日も歌を歌う。
人々の心を明るくするために…
今のローザの歌声は、以前よりもずっと真心のこもった温かなものだった……
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