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深い森のなかで、私は迷子になっていた。
どうしてとか、どこから来たのかとか、考えても思い出せない。
ただ、立ち止まったままでいることはできない。そんな強い確信だけが足を進めさせていた。
幸い、鬱蒼とした森の割に、明らかに道とわかるものが続いている。あてどもなく、私は進む。
しばらくして、二股の分岐が現れた。
道標が左右につけられているので出口のヒントになるかもしれない。
なになに…?
←『明るい』|『暗い』→
……方角ですらない。
普通に考えたら明るいところに行けば安心できそうだが、明るい道が必ず正解かと言えば、そうじゃないこともある。
時には暗いトンネルを抜けなければ辿り着けない場所もある。
目指す場所すらわからない私に、どちらが正しいかなんて分かりようがない。
それでも進まなければ。
私は、道を選んだ。
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