3人が本棚に入れています
本棚に追加
至福の最期
苦悶の表情を浮かべながらも男の表情は
どこか清々しい。
「そうか…そうだったのか…いいよ、仁美…
俺の血でいいなら好きなだけ…」
「え…」
思わず噛みついた首筋から口を離し
男を見つめる仁美。
「仁美になら…俺はいいから、さあ…」
「うっ…ごめん、ごめんね…麻利央さん」
そう言うと仁美は男と唇を重ねた、
そしてその唇からは
止めどなく血が流れ落ちてゆく。
至福の表情を浮かべたまま男は静かに息絶えた。
「ごめんね…こんな愛し方しか出来なくて」
真っ白なナース服を深紅に染め上げた仁美は
静かに部屋を後にした。
騒ぎを聞いてかけつけた警察が
その部屋で見たものは…
ミイラのように干からびた1人の男が
笑顔で虚空を見つめている、
この世のものとは思えない光景だった。
聞けばその病院には“◯◯ 仁美”と言う名の
ナースは在籍していなかったと言う。
愛する男の血を求めて夜な夜な現れるナース仁美…
次に彼女が現れるのはあなたが通院している
その病院かも知れない。
最初のコメントを投稿しよう!