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 つむじ風の先では、アカリが笑っていた。彼の胸元で懐中時計モチーフのペンダントがキラリと光り輝く。 「草魔法番号・第八十四番は?」 「――“葉書(リーフ・トーク)”か」  アカリが「あったりー」とニヤニヤする。“葉書(リーフ・トーク)”は上級者専門の魔法で、植物と会話出来るようになるものだ。 「トペラ君を応援してって木々に話し掛けたら“トペラの頑張りを眺めるのがワレの楽しみ。ワレはそなた達の味方だ!”って返事が来たんだ。誰からだと思う? あっちに居る大学のシンボルツリー君からだよ!」  アカリは数メートル先にある大樹を指差す。()は葉や枝を擦り合わせて音を奏でていた。その音はどこか郷愁を誘う。  嗚呼そうだ。魔法中学や魔法高校への登下校中にも、アカリはあらゆる魔法を駆使してオレを楽しませてくれたんだ。二つの時の葉音とアカリがリンクする。どちらのアカリも目が眩みそうになるほどの笑顔だった。  ―――お婆ちゃん。オレ、分かったよ。  オレにとっての日光は……大切な存在の一つは、アカリだったんだな。 ✽✽✽ 「さてと。ボク、そろそろ大学の方に戻るね」 「え、荷造りとかは?」 「荷物は大学に預けたんだ。今日は前段階の検査らしい」 「検査?」 「そう。あっちに行くことが決定したら数回の性格検査が必須なんだ。大学で研究中の特殊魔法や禁断魔法を悪用されないように、らしい。今日がその最終チェックなんだって」  随分と厳しいな。まあ犯罪者が現れないようにする対策ならば納得出来るが。オレとアカリはぐっ、と両手に力を込めて握手をする。これで会うのが最後って訳ではないけど。 「頑張れよアカリ。ってか、お前の夢は何だ? 何か理由があるから移動を決意したんだろ?」 「んー、秘密。トペラ君は?」 「秘密? ……オレはなあ、オレの魔法で皆を笑顔にする。戦闘とかじゃなくて、一つ一つの命のために魔法を使いたい!」 「ふっ……あはは、アカリ君らしいや」 「だから今日も練習しなきゃな。帰ったら魔法使用時のポーズ、指の動かし方確認、唱え方も分析しておいて……」  オレがブツブツ呟くと、アカリは手を握る力を増し、危うく手の骨が折れそうになるくらいだった。 「い、いてぇ!」 「ねえアカリ君。今まで重点的に特訓したのは、唱え方なの?」 「え……そうだ。まずは形から入らねえと」  アカリはそれを聞くと、ぱっと両手の力を抜き、大学方向へと数メートル走る。そして腕が千切れそうになるほどに思い切り手を振った。 「じゃあ一つ教えてあげる! 形が美しく、大きく、立派な植物でも実は根が浅くて脆いってこともある。逆に形が歪で、弱そうに見える植物が実は深くまで繊細な根を張っていて、簡単には引っこ抜けないってこともあるんだよ!」
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