理想の先

12/20
前へ
/20ページ
次へ
「カァ!」 鶴の一声ならぬ、カラスの一声と共に、奴は待ち合わせ場所に向かう俺の頭を踏みつけたかと思えば、そのままカツラを咥えて飛び去ったのだ。 そんな漫画みたいな出来事あるだろうか?誰もがそう思うだろう。俺もそう思う。 でも、あったのだ。実際に。 「待て、待ってくれ……」 それから必死に、カツラを咥え飛び去るカラスを追いかけた。 ひとつ幸いだったのは、カラスがずーっと一直線に飛んでいることだ。おかげで見失わずに済んだ。 もしかすると、あれか。巣があるのか。 この先に、奴の巣があるのかもしれない。そこにふさふさな俺のカツラを置く気なのかもしれない。 そう考えると、ヤケにしっくりきた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加