理想の先

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───俺の髪が薄くなってきたのは、確か中学2年生の頃だ。 「達哉(たつや)、なんかハゲてね?」 友人の一人が、座る俺を見下ろして言った一言。 「誰がハゲだよ!」なんて、その時は笑ってツッコんだけれど、家に帰って合せ鏡で見ると、確かに後頭部が薄いように感じた。 でもまぁ、気のせいだろう。 その時は、それで終わらせてしまった。 思えばこの頃から少しずつでも手入れをしていれば、俺のハゲがここまで加速することもなかったのかもしれない。 過ぎた時間を悔やんでも仕方がない。そんなことは分かっている。分かってはいるのだが、まさか25歳で頭頂部がカッパのようにまぁるくハゲてしまうだなんて、誰が考えるだろう。
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