甘い夜

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甘い夜

<まえがき>  前回の「渇き」の後、すったもんだあって東郷に飼われることになった矢沢。ケーキを食べたいとう欲求と、自分が倫理に反することをしようとしていることへの罪悪感で激凹みしているけど大丈夫!東郷はこうみえて柔道黒帯のフィジカル強強攻めだった!どんなに矢沢が食べようとしても、返り討ちにあっちゃうよ!  そして東郷の新事実!彼は自分への強い執着が大好きな激ヤバメンヘラ男だった! 「僕を食べたい欲求を抑えられないなんて、なんて可愛い人なんだ!」と矢沢に恋をしちゃったんだって!  なんだかんだあって、矢沢と東郷の存在から警察はケーキバースを解明することができて、世の中はケーキバース対策に動き出した!これからも二人は愛を育みながら、ケーキバース研究に協力していくよ!  今回はそんな二人のラブラブ監禁……いや、同棲生活を覗いてみよう! <本編>    車を自宅マンションの地下駐車場に停めた東郷は急ぐように自宅へと向かった。家で待つ矢沢にあと少しで会えると思うと思わず頬が緩んでしまう。  今日で東郷が請け負う重要な事件が一区切りを迎えた。その事件とは全国で多発した『人を食べようとする人』による猟奇的な殺人・傷害事件であり、この事件の原因こそ恋人の矢沢と東郷を深く結びつけることになったケーキバースだった。  東郷と矢沢の存在で困難と思われた調査は飛躍的に進み、本日政府から全国民へケーキバースの存在が公表された。世界はしばらく混乱に見舞われるだろう。しかしそれにより救われる人達がいることを思うと決して悪いことではないと東郷は考えていた。  東郷は今日の公表の準備に追われ、自宅に帰るのは実に三日ぶりだった。最後に見た矢沢の少し不安そうな顔を思い出すと胸の奥がキュンと疼く。出会った頃はフォークの本能を抑えられず東郷を何度も襲おうとした矢沢だったが、研究と並行して進められた東郷による訓練のおかげで欲望のコントロールができるようになっていた。しかし訓練を始めてからほぼ毎日のように会っていた二人が三日も会わないことは初めてのことで、矢沢が不安に思う気持ちも東郷には理解できた。  禁欲状態で東郷の帰りを待つ矢沢は、今頃どうしているのだろうか……。矢沢のことを思うと、自宅への短い道のりですら気が急いてしまう。  自宅前にたどり着いた東郷は気持ちを落ち着かせるため一度深く深呼吸をした。  カードキーをかざすとピッという音とともにガチャリと鍵が開く音が聞こえた。東郷は静かに玄関ドアを開けて中の様子を伺うが、どうやら明かりは一つも点いていないようだ。 「矢沢さん、ただいま」  玄関を入り奥へ向かって声をかけるが廊下の自動点灯の明かりが付くだけで奥からは静寂だけが返ってくる。  東郷は履いていた革靴を脱いで廊下を進んだ。  リビングのドアを開けて明かりのスイッチをいれる。部屋をぐるっと見回したが人の気配はなかった。  東郷は少し落胆しながらカバンをソファーに置き、スーツの上着を脱ぐとソファーの背もたれに雑に掛けた。  時刻は夜の十時を過ぎているので、もしかしたら先に寝たのかもしれない。  東郷はネクタイを緩めながら水でも飲もうかと冷蔵庫に向かった。すると視界の端に一瞬、部屋の明かりを微かに反射する何かが見えた。  それはダイニングテーブルの上にあった。それを見つけた東郷の顔には思わず物騒な笑みが浮かんだ。  東郷はダイニングテーブルの上のものを拾うと、リビングからつながる寝室に足を向けた。寝室に明かりは点いていない。  寝室に入ると、東郷は部屋の明かりはつけずに間接照明のスイッチを入れた。 「いつからここで待っていたの?」  矢沢は寝室のベッドの上に座っていた。俯く顔からは表情は見えないが、短く浅い呼吸音が聞こえてくる。  東郷は矢沢の顔を一瞥したあと、そのまま視線を下にずらしていき、矢沢の不自然な位置に向かって伸びる腕を辿っていった。そして手首で鈍く光る手錠に目を留めた。それは矢沢のケーキを食べたいというフォークの欲求が抑えきれなくなった時にいつも使っている手錠だった。 「自分で着けたんだ。偉いね。我慢できなさそうだった?」  矢沢の両腕を拘束する手錠はベッドのヘッドボードに掛けられ外せないないようになっている。   東郷は手に持っていたものをナイトテーブルの上に置いた。そこには手錠と同じ色の鍵があった。  東郷は徐に矢沢の顎に手を添えると少し乱暴に顔を上に向けさせた。間接照明の暗い灯りに照らされた矢沢の顔は溢れる涙と唾液で艶やかに濡れていた。 「あっ……、と……ご……さっ……」 「待たせてごめんね。すぐ楽にしてあげるからね」  東郷は顎に手を添えたまま親指で矢沢の濡れた唇をなぞった。そのとき、 「……ッ!!」  矢沢は一瞬の隙をついて東郷の親指に噛みついた。咄嗟に手を引いた東郷は噛まれることは回避できたが、歯が掠めた指は僅かに切れ血が細い筋を作っていた。  矢沢はその赤い筋から目が離せないようだったが顔には苦悶の表情が浮かんでいた。 「あっ……ごめ……ごめんなさっ……」 「大丈夫だよ、僕が不用意だったね」  東郷は指の血を雑に舐めとるとナイトテーブルの引き出しを開けて中から必要なものを取り出した。  ローション、コンドーム、そして…… 「これ、つけるからいい子にしてね」  東郷の手にはSMで使われるボールギャグが握られていた。普通と違うのはそれが唇の形をしていて、真ん中に大きな丸い穴が空いていることだ。  東郷は矢沢の隣に腰を下ろすと「ほら、口を開けて?」と矢沢の頬をそっと撫でた。  矢沢は少し躊躇ったあと目をギュッと閉じておずおずと口を開けた。矢沢にはフォークの強烈な欲望と同じぐらい正しい人でありたいという思いがあった。その葛藤ゆえのギリギリの理性が矢沢を東郷に従わせているのだろう。東郷はその従順な姿を見ながら自分の下腹部に熱が集まっていくのを感じた。  東郷はなるべく素早くボールギャグを取り付けた。大きく空いた穴から矢沢の赤く暗い口内が覗いている。矢沢はもはや喋ることもできず、ハァハァという荒い喘ぎがもれるばかりだった。  東郷はその姿を思う存分堪能したい欲望に駆られながらも矢沢を早く楽にしてあげるために動いた。  フォークの矢沢はケーキの東郷を食べたいという欲求があるが、それは我慢すればするほど強くなることがわかっていた。逆に言えば定期的に欲求を満たすことで捕食欲求を緩和することができた。とはいえ、実際に東郷の血肉を与えることはできない。しかし様々な調査を行う中でフォークにも個体差があり、ケーキに対する欲求も様々なことが分かった。矢沢はとりわけ東郷の精子を摂取することで欲求が発散され精神が安定する傾向にあった。 「服を脱がすよ」  矢沢はベットに体を寝かせ、少し腰を上げた。その姿に東郷は興奮で背筋がゾクゾクするのを感じながら、矢沢の部屋着のズボンを下着ごと引き下ろした。弾みで矢沢の勃ち上がった陰茎がフルンと飛び出してくる。 「キレイな体を僕によく見せて」 「……っ、……はっ……」  矢沢は顔を赤く染めながら膝を体の方に曲げ、手首の手錠を支えに腹と足の力だけで腰を軽く持ち上げた。その努力により、繰り返し行われた行為で形を変え始めた慎ましい穴が東郷の位置からでも見えるようになった。  東郷は健気な矢沢を満足の表情で眺めながら、自身もベルトを外し下着ごとスーツを脱いで床に放った。  東郷の陰茎はやる気に満ち溢れ、凶暴なほどに大きく勃ちあがっていた。矢沢の痛いほどの視線を感じながら、東郷は焦らすように自らの陰茎を片手で擦り上げた。矢沢の息が上がる。 「じっくり楽しみたいけど、あんまり焦らすと矢沢さんが辛いから少し頑張りますね」  東郷はローションのボトルを手に取ると、中身を手に取り出し矢沢の内腿に塗りたくる。 「あっ……!! あっえっ……!」   矢沢は驚いたように顔を上げて開かれたままの口で何かを訴えるが、東郷はそれを無視して先を進めた。 「足ギュッと締めてくださいね」  東郷は矢沢の膝あたりを掴むと、それを一つにまとめるように持ち脚を肩に担ぐ。そして閉じられた内腿に自身を一気に突き刺した。 「あっ!! あっ……あぁ……!」 「はぁ……動くよ」  東郷は最初の数回だけゆっくり陰茎をするように腰を動かすと体制を整え、その後は力強く腰を振り始めた。東郷の腰の動きに合わせてローションがグチュ、ヌチュと卑猥な音を立てる。  建前としては矢沢を落ち着かせるための行為だが、東郷にはすでにその境は曖昧なものになっていた。  東郷は矢沢の陰茎を擦るように律動に少し角度をつけた。東郷の陰茎には内腿の気持ちいい圧の他に、矢沢の裏筋をゴリゴリと擦る感触が加わった。 「あっ……、あっ……あぁっ……」  矢沢の開いた口からは息苦しそうな、こもった喘ぎが絶え間なく漏れ続けていた。顔は涙と汗と唾液でぐずぐずになっている。  東郷は矢沢から視線を離さずひたすら高みを目指した。矢沢の視線は足の間を出たり入ったり繰り返す東郷に向けられていたが、東郷が一際強く陰茎を擦り付けたときヒュッと息を呑み、目をギュッと強く閉じた。目から溢れた涙が頬を流れる様を目にし、東郷の興奮も最高潮に達する。 「うっ、クッ……! だすよ!」  東郷は自身の陰茎を引き抜くと無駄のない動きで矢沢の頭の近くまで移動した。そして矢沢の顎を片手で掴むと、もう片方の手で矢沢の口を拘束するボールギャグの穴へ自身の陰茎の先を押し付け欲望を奥へとぶち撒けた。  口が閉じない矢沢は喉を器用に使って東郷が喉奥に出したものを飲み下す。ゴキュッという音と共に喉仏が上下する。矢沢が着ているTシャツに雫が飛び散った跡がついていた。どうやら矢沢も達したようだ。  東郷は息を整えてから、恍惚の表現を浮かべる矢沢の口の拘束を解いてやった。  矢沢は口が自由になると、口内に残る残滓を味わっていた。その間に手首の縛めも外してやる。  両手が自由になると矢沢は、東郷の少し落ち着いた、それでも十分な硬さを残す陰茎を掴み、管に残る残滓を全て堪能するが如く勢いでちゅうちゅうと先端に吸い付いた。 「少しは落ち着いた?」  東郷が矢沢の髪に指を通しながら聞くと、矢沢は最後にジュ……と強く吸い、ようやく顔を離した。そのまま体を起こし、ベッドの上に東郷と向き合うように座る。 「すみません……。ありがとうございました……」 「なんで謝るの? むしろ待たせてごめんね」  ナイトボードに置いてあるティッシュを何枚か手に取ると、「辛かったよね」と言いながら矢沢の濡れた顔を拭いてあげた。矢沢は恥ずかしそうにしながらも抵抗はしなかった。  最初の頃は警戒心とプライドの壁があった矢沢も今ではすっかり東郷に気を許している。そのことが東郷にはこの上ない喜びだった。  東郷はそっと矢沢の手を取った。手首が少し赤くなっていた。そして矢沢の顔を見ると口の端に少し血が滲んでいた。  このような拘束が必要な矢沢のことを哀れに思う。正義感の強い矢沢が苦しんできた姿を側でずっとみていた。それでも東郷は自分を強く求める矢沢が愛おしかった。矢沢が運命を呪っても、東郷は運命に感謝する、その皮肉さを感じながら矢沢の赤い跡に優しく触れた。  少しの間東郷が物思いに耽っていると、矢沢がソワソワしながら「あの……」と声をかけてきた。 「ん? どうしたの?」 「東郷さん……」  矢沢は東郷の手を自分の腕から外すと、着ていたTシャツを脱ぐと、先ほどの積極的な姿とは対照的にそっと東郷の陰茎に触れた。 「すみません……。もう少しだけ……」  そう言いながら、矢沢は誘うように東郷の陰茎を上下に擦った。そのもどかしい緩慢な刺激に東郷のやる気が引き出さらていく。 「もちろんだよ。次は後ろに入れるからね」  東郷がにっこりと口角を上げながら言うと、矢沢は一瞬躊躇いを見せたあと東郷と少し距離をとった。  膝を立てるように座り、後ろにゆっくり体重をかけると足を少し開く。体を支える腕と反対の手を自分の後孔に伸ばし、指先をそっと押し入れた。穴から透明な液体がぷくりと溢れ出る。艶めきながら流れる液体に目を奪われ、喉がゴクリと音を立てた。  東郷は矢沢のことをベッドに押し倒すと乱暴に唇を奪った。突然のことに矢沢が驚いたのは一瞬で、すぐに矢沢も東郷とのキスに夢中になった。矢沢は舌を巧みに使い、東郷の口内の舐めあげていく。  しばらくの間キスに没頭していた二人は自然と見つめ合う。 「一人で準備したんだ?」  東郷は矢沢の後孔に手を伸ばし、穴の周りを優しく撫でたあと指先を軽く押し込んだ。 「あっ……」 「すんなり入っちゃったね」  東郷は内壁を撫でるように細かく抜き差ししながら少しずつ指を差し入れていく。矢沢の準備のお陰ですぐに指は奥まで差し入れられた。 「さっき慌ててたのはこれを伝えたかったから?」  東郷は指を二本に増やして今度は穴を広げるように撫でていく。 「そんなに入れて欲しかったんだ」 「だって……あぁっ……!」  東郷は熟知している矢沢の良いところを二本の指でグリッと押した。矢沢の体がビクッと跳ね、再び勃ちあがった陰茎の先から雫が溢れた。  強い刺激に翻弄される矢沢を他所に、東郷は首筋から鎖骨へと徐々に下がりながらキスを落としていく。そして触れる前から存在を主張するように健気に勃ち上がる乳首へと移動した。  後孔を愛撫しながら乳首を口に含み、舌で突いたり転がしたりと可愛がる。空いている手で反対側の乳首も構ってあげると、矢沢は堪え切らない様子で体をくねらせ口から快楽の喘ぎを溢した。 「と……ごさん……あっ、もう……入れて……」  矢沢は胸に居座る東郷の肩を力の入らない手で押しながら息も絶え絶えに訴えた。  東郷は最後にチュっと音を立てるように乳首を吸い、ゆっくりと体を起こす。後孔から指を抜くと矢沢が小さく息を呑む音が聞こえた。  東郷は着たままになっていたシャツを脱ぎ捨て、ベッドの上に転がっていたコンドームの拾うと、中から一枚取り出して自身のこの先の行為への期待で膨れ上がった陰茎に装着する。 「矢沢さんの望みの通り入れるね」  東郷は先端を矢沢の後孔にピタリとつけると、そのままゆっくりと押し込んでいった。矢沢の体が衝撃に耐えるように反り返る。  矢沢の体を傷つけないように、たまに前後に揺らしながら少しずつ挿入していく。しかし東郷の気遣いなどわからない矢沢の中は東郷をどんどん奥へ奥へと引き込んでいき、すぐに東郷の全てがすっぽりと矢沢の中に収まった。  東郷を迎え入れた喜びで一杯の矢沢の中は東郷の陰茎を食い締め、東郷は快感を堪えるように大きく息を吐いた。 「そんなに締められたら出ちゃうよ。僕を情けない男にしないで」 「違っ……知らなっ……あっ!」  矢沢の言葉を待たずに東郷は抽挿を開始する。初めは矢沢の様子を伺いながら動いていた東郷も、しばらくすると自分の快感を追い始めた。 「あっ、あっ、あっ」  部屋の中に東郷の腰が矢沢の尻を打つ音が響き、勢いに押された矢沢の体が逃げるようにくねる。  東郷は矢沢の両方の手を指を絡めるようにそれぞれ掴むと矢沢の頭上で押さえつけた。そのまま腕を腕で押さえつけ、矢沢の体にのしかかるように体重を乗せた。  東郷の下で身動きの取れない矢沢は悲鳴のような嬌声をあげた。抵抗するように体を捩らせるが、高まっていることは明らかだった。 「あっ、あぁ、んぅっ、あ……」  腰を打ちつけるたびの矢沢の口から喘ぎ声が溢れる。東郷はその口さえもキスで塞いだ。  矢沢の興奮に引きずりられるように東郷もどんどんこの行為にのめり込んでいく。押さえつけた体から伝わる体温が混ざり、次第に境界が曖昧になっていく。  二人の感覚が共鳴するような錯覚に陥りながら共に上り詰めていく。 「――ッ!!」 「っんあぁ………!!」  目の前で光が弾け、東郷は矢沢の中に欲望をぶち撒けた。全身の筋肉が硬直し息が止まる。暫くして呼吸が戻ってくると東郷は固く押さえ付けていた矢沢を解放した。二人の体が重なっていたところは汗と矢沢が放ったもので濡れている。  東郷から開放された矢沢は朦朧としながら体を痙攣させていたが、暫く経つと意識が戻ってきたのか体に酸素を取り込もうと何度も大きく呼吸を繰り返していた。  東郷が矢沢の中から陰茎をズルッと引き抜くと、矢沢は小さく息を呑む。 「矢沢さん、大丈夫?」  未だ返事ができない様子の矢沢を見ながら自身の陰茎がコンドームを取り外す。コンドームの先は東郷が吐き出した精液がたっぷりと入っていた。  東郷は中身が溢れないように軽く口を結ぶとナイトボートに置き、自分と矢沢のために水を取りに寝室をあとにした。  東郷が濡らしたタオルとミネラルウォーターのペットボトルを持って寝室に戻ると、矢沢はベッドの上に座っていた。  東郷がナイトボートにおいた使用済みのコンドームを頭上でで逆さにし、口を開けたまま顎を上に向け、コンドームから流れ出る白濁した液体を舌の上で受け止めていた。  口から少し出ている赤い舌と、恍惚とした表情があまりにも淫靡で、東郷は暫くの間声をかけることも忘れその姿に魅入られていた。  矢沢は最後の一滴まで飲み干すと、満足した様子で息をついた。 「あっ……」  寝室の戸口で自分を見ている東郷の姿に気がついた矢沢はばつの悪そうな顔で目をそらす。 「美味しかった?」 「からかわないでください……」 「からかってないよ。」  東郷は矢沢の近くに行くと、空になったコンドームをペットボトルと交換し、ゴミ箱に捨ててから矢沢の隣に腰をおろした。 「矢沢さんに喜んでもらえて僕はこんなにうれしいのに」  矢沢の肩をそっと抱くと、抵抗することなく東郷にそっと寄りかかった。 「これからどうなるんでしょうか……」  矢沢は目を合わせずに問う。当事者として、ケーキバースを巡り変わっていく社会を案じているのだろう。  東郷は矢沢を安心させるように肩を優しく撫でながら「大丈夫」と返す。 「きっと良い方向に進んでいくよ。少なくとも僕はそれを目指している」  顔を上げた矢沢と見つめ合い、キスをする。  僕の愛するフォークを幸せにしたい。だってケーキはいつだって人々を幸せな気持ちにさせるものだから。  東郷は再び熱を持ち始めたキスを深めながら、改めて心に誓う。  二人だけの甘い夜が更けていった。
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