雨の中

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「お疲れ様、じゃあ月曜日にね」  体育館の玄関前で、後輩に笑顔で手を振る。  下校時刻10分前になり、校庭のあの騒がしさも徐々に静かになっていた。  でも、まだ校庭で部活をやっている部がある。  サッカー部だった。 「お疲れさまでした! 亜希先輩」  明るくて素直な後輩の一言で、我に返る。 「うん。気を付けてね」 「はい!」  小さな体で大きなリュックを背負い、小さな足取りで歩く姿がなんとも愛らしい。1年生のとき、先輩もそんなこと言ってくれたっけ。  あの時はまだ、じゃなかっけ。  もう、詳しく覚えていない。いや、思い出そうとしないだけかもしれない。自分で、思い出すことをやめている。  思い出したとこで、いいことなんて1つもない。  ただ、苦しむだけ。
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