1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、憶えてる? 亜希が昔、話してくれた話」
ハスキーがかった声が鼓膜を震わす。最初は体に手を回しただけだったが、今はもうちゃんと抱きしめられていた。
「小学校の帰りに、こんな風に話してたよ」
雨って、いやな人が多いじゃん? でも私はね、こう考えるの。
あの一粒、一粒が小さな幸せだって思うの。
雨粒ってすごく小さいでしょ? 幸せだってきっとそうだから。本当に小さくて、些細なことが集まれば皆が言う幸せになるんじゃないの?
傘に弾ける雨音。ランドセルを背負った私と、友都。
そうえいば、そう言っていた。私が忘れかけていたことなのに、憶えててくれてたんだ……。
「だから、俺、この天気に告白しようって思ったんだよ? 俺にとって、思い出の天気だから」
ぎゅっ、と友都の力が強くなる。
「本当に好きだよ―――」
私も、ずっと、そう思ってた。
苦しむくらい好きで、話せなくても、たとえ近くに居なくても、ただあなたがいるだけで良かった。それだけで、嬉しかったのに。
それ以上の、幸せがあるなんてっ――‼
「私も、同じ」
ずっと、私達の空の上に雨が降り続けますように。
最初のコメントを投稿しよう!